2018/02/13
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志のリーダーシップ
第5回
最も大事なのは「自分は何者か?」と決めることである。(5/5)
- スペシャル対談
- リーダーシップ
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「経営者を語る。」――今回は鎌田英治氏(株式会社 グロービス マネジング・ディレクター/知命社中 代表)をゲストにお迎えします。
今回のテーマは、「難しい時代にあって、魂の入った志と目標を考え抜くためのエネルギーをどう探していくか――」。
『知命社中』という異業種の経営幹部同士が一堂に会し、6ヵ月にわたって濃密な思考と対話を繰り返すコミュニティを一昨年からスタートさせた鎌田さんと、弊社代表の井上和幸が、これからの経営者、リーダーに必要なものを語り合いました。全5回でお届けします。
井上 知命社中に参加される方というのは、そこで大きな気づきを得ることによって自分を相対化するというか、より高次の視点を獲得して会社に戻られていると思います。鎌田さんご自身、これまで大きな気づきを得た瞬間には、例えばどんな場面がありましたか。
鎌田 たくさんありますが、大きなものを挙げると、先ほども申し上げたように長銀が潰れたときが先ず挙げられます。その後、38歳でグロービスに転職したとき、リーマンショックのとき、コロンビア大のエグゼクティブ・プログラムに参加したとき――この四つがあるかなと思います。まず会社が潰れたときですが、この話の結論は、「結局は全て自分次第だ」ということでした。
井上 まさか長銀が潰れるなどとは思ってもいらっしゃらなかったと思いますが……。
鎌田 教訓としては陳腐かも知れないですが、「世の中に絶対というものはない」と身をもって感じましたね。当時はネガティブな思考に襲われて、「家を売って、子供は高校まで行かせられればいいかな」という思考になりもしました。でも悩みながら考えた末にわかったことは、「まだ死んではいない。命がある」ということでした。そこまで行くと腹も据わり、「どうにかなる。どうにかする。どうにかできる」と思えました。
でもまだ僕の中では被害者意識があって、ずっと「犯人捜し」をしていました。「誰がこんな状況にしたんだ!?」と。しかし、なんとなく破綻の構造や原因が見えた瞬間に意識の転換が起きました。つまり、原因や“犯人”がわかった所で潰れたという事実は変わらない、という現実に漸く気づいたということです。その時、はたと恥ずかしい思いになりました。会社が潰れたという厳しい事実を直視せずに、単に他責にしていた自分を恥じました。「俺だってその一味だったんじゃないのか」と自らの不作為を恥じました。「大事な事実を横に置いて、他人のせいにしていても何も始まらない」と強く思いました。
そして、もう一つ。「会社に人生を預けすぎていたかもな」と。雇用は守られるなどと安心していた訳ではないけれど、「自分で道を拓く」とか、「自分の日々の食い扶持は自分で稼がなきゃいけないんだ」といった覚悟は薄かったということでしょうね。
井上 二つ目の転機はグロービスさんへの転職ですね。
鎌田 ここで得たのが、「自分で自分を成長させる責任」への自覚です。それまでとは業界が違うので、若い人からもお客さまからも、出会う人が全て師だと思って学ぼうと思いました。学ぶことは楽しいし、学びはエンタメだと思うほど、学習に対する感覚が大きく変わりました。
井上 当時は、まだ社員数もそれほど多くない時代でしたね。
鎌田 創業7年目くらいだったので、クライアントのドアノックをしても「どこの誰ですか?」といった感じでした。一から自分から作らなければいけなかった。そうこうするうちに、部門のトップになったんですが、そうなると、誰も指示してくれる人はいなくなる。長銀時代は3、4年に一度はローテーション(異動)があって、「今度はこの仕事をやってみろ」と挑戦課題は組織が用意してくれていました。だけど小さな会社ではローテーションもないし、創業7年目のベンチャーは成果にどん欲でなければ、次の成長が得られません。そこで、自分が課題を設定し、自らを成長させないと組織を成長させることはできないことを実感として強く感じました。そういうことで、学ぶことの必要性をずっと考えてきたんですが、ある日「自得」という言葉に出会いました。要は、賢人から学ぶことは重要だけれど、最終的にはその依存心を捨てなさい、ということです。この言葉はリーダーとしてその後も大事にしています。
井上 三つ目のリーマンショックのときは、やはり大変でしたか。
鎌田 「人の活力を引き出すことは経営の本質である。その当事者としての自覚」というのが、そのとき得たことです。先ほどの「やりましょうよ」に近い話しです。10年間結構いい成長ができて、リーダーとしても組織の信頼もいただいていました。でも、リーマンショックでトップライン(売上高)の2割が消えたわけですね。みんなで努力して戻そうとしたんですが、しばらくは、なかなか戻らなかった。「戻そう。戻そう」という感じで、自分自身にそういう意識や雰囲気が出すぎたと思うんですが、カルチャーサーベイを実施したら、やはり「組織の空気が停滞している」とか「閉塞感がある」という話になって、「原因は俺だな」と、凹むと同時にすごく反省しました。「強いリーダーシップだけじゃダメなんだ」と。担当部門のリーダーについても社長の堀と相談して、僕はラインからバックオフィス、コーポレートに引くことにしました。そのあたりから、コーチングを学び始め、コロンビア大学に行くことになり、そういうことの中で、結局は自分次第で人の活力が変わるということがわかりましたね。
井上 コロンビア大のエグゼクティブプログラムでは、例えば、どんな学びが?
鎌田 コロンビアに行ったのはちょうど50歳、非日常の中で自分自身に正直に向き合う時間が持てたと思います。ここでの学びは「自分で“自分は何者か?”を決める」のが一番大事だと思ったことですね。価値観の棚卸をして、「結局、俺はこうなんだな」ということがわかると、『天才バカボンのパパ』ではないですが、「これでいいのだ!」と思えたんですよ(笑)。ここからは自分のありたいように、フルスイングでロックに生きようと決めました(笑)。全てにおいて選択的かつ自覚的に決めていく、そして、自己定義を明確にしていくと、力が湧いてきます。自分が何をしようとしているかということが、自分の中でタイトル付けというか概念としてセットされると、自ずとやることが決まってくる。その実感が自分で気に入っていて、自分が何者かを――「探す」のではなく「決める」。「探求する」というと“正解探し”のようになってしまいますからね。「決める」ということがすごく大事です。
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