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2018/05/21

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スペシャルコラムドラッカー再論

第122回

目標は自らが設定する~ドラッカーが広めた「自己目標管理(MBO)」。(前編)

  • エグゼクティブ
  • マネジメント
「MBO(Management by Objectives and Self-control、自己目標管理)」。

聞いたことのある読者経営者諸氏は多いと思うし、自社に導入されている企業各位も少なくないと思う。
MBOはドラッカーが語り、その後普及した目標管理制度だ。今回と次回、ドラッカー自身が語るMBOについて見てみたい。

そもそも目標は、自らの属する部門への貢献によって規定されなければならないとドラッカーは語る。当然のことだ。
だからこそ、その目標を設定するのは、当事者一人ひとりである、とドラッカーは言う。

「もちろん上位のマネジメントは、それらの目標を否認する権限を持つ。しかし、それらの目標を規定することは、一人ひとりの責任である。まさに最大の責任である。ということは、自らの属する組織の目標の設定に参画することが、一人ひとりの責任だということである。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)

これは、決して、動機づけ的な意味合いで言っているのではなく(ドラッカーは「人間関係論にいう参加意識では不十分」と述べている)、当事者が責任を負っているということで、だからこそ、自らの目標は、上司や自分の「好み」ではなく、組織全体の目標を反映したものでなければならない。それゆえに、本人の心からの決意が必要なのだ。

「組織全体の目標を知り、自らに何がなぜ求められているかを知らなければならない。こうして組織内のあらゆる部門の間に協力関係が生じなければならない。それは、マネジメントの全員が、部門目標の検討に責任をもって参画するときに可能となる。そのようにして、部下のマネジメントが目標の設定に参画するとき、彼らに何を期待し、何を要求できるかが明らかになる。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

ドラッカーは、この本人の主体的な目標設定のための方法論として、「マネジメント・レター」というものを紹介している。

部下たちは、上司が目標とすべきと思っているであろうものと自らが目標すべきと思うものを書き出す。
期待されていると思う水準を書く。
目標を達成するために行うべきことと、障害になっていることを書く。
組織と上司が行っていることのうち、助けになっていることと、妨げになっていることを書く。
自らの目標を達成するために、次の一年間に行うべきことを提案する。

「この手紙が上司に受け入れられたとき、当人にとっての憲章となる。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

これを実際にやると、なにが起こるか——。

「このマネジメント・レターほど、上司の何気ないひと言が部下を混乱させていることを教えるものはない。すでにこれを10年続けている大企業がある。いまだに、ほとんどあらゆる手紙に、受け手たる上司が困惑させられることが一つは書いているという。「これは何のことですか」と聞けば、「この春、エレベーターでおっしゃっていたことです」と答えられるのがオチだという。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

マネジメント・レターは、平素、上司がいかに部下を混乱させ振り回すような朝令暮改や矛盾した要求を、おそらくは無意識のうちにいかに多く行っているか、を浮き彫りにするようだ。

(続く)

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プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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