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2017/07/10

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スペシャルコラムドラッカー再論

第81回

プロセスとしての生産の原理。

  • マネジメント
今回は、「仕事の分析」に続き、「プロセスとしての生産の原理」について。

「生産とは、材料にツールを適用することではない。仕事に論理を適用することである。仕事に正しい論理を、より明確に、より一貫して、より合理的に適用していくほど、生産の限界はなくなっていく」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)

またしてもドラッカーらしい言い回しだが。

生産にはいくつかの基本となるべき原理が存在し、そのそれぞれが独自の制約条件や必要条件、特徴を持っている。
したがって、生産のプロセスは、生産の原理に忠実に設計するほど、より円滑、より効果的、より生産的になるに違いないということを、ドラッカーは言っている。

ドラッカーは、生産の原理には次の4つがあるという。

(1)個別生産
(2)リジッド(限定的)大量生産
(3)フレキシブル(適応的)大量生産
(4)プロセス生産

「これら四つの清算の原理は、それぞれの仕様をもち、マネジメントに対しそれぞれの要求を突きつける。しかも生産の限界をなくし、生産の成果をあげるには、次のような二つの原則がある。
(1)生産の原理を一貫して適用すれば、生産の限界はそれだけ大幅かつ容易になくすことができる。
(2)四つの生産の原理には進化の差がある。個別生産が最も古く、プロセス生産が最も進化している。
(中略)
生産の原理とマネジメントの能力についても、二つの原則がある。
(1)生産の原理によって、マネジメントに対する要求に違いがあるだけでなく、必要とされる能力に違いがある。したがって生産の原理の変更にあたっては、それまでの仕事の仕方を改善しようとするよりも、新しい仕事の方法を適用しなければならない。
(2)生産の原理を一貫して適用するほど、マネジメントにとって生産の原理からの要求を満たすことが容易となる。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

要するに、いかなる生産の原理を適用すべきかを知り、その原理を可能な限り徹底し、更に、より進んだ原理を適用できる部分をみつけて適用し、それらの生産の原理がマネジメントに対して要求するものを知ることが大事なのだとドラッカーは説く。

なるべく統合された生産プロセスに向かうべくが望ましく、多品種大量生産の原理をひとつの帰着点としてドラッカーは見ているようだ。ここが興味深い。

「特に大量生産の原理が働く人に成果をあげさせて自己実現を行わせないならば、それはエンジニアリング上の間違いのためである。機械化の意味を理解できないためか、仕事と労働の違いを理解できないための結果である」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

実際には生産プロセスの段階ごとに、適用される生産の原理は異なることが多い。段階ごとにそれぞれを別の生産の原理で編成するべき企業や機関は多い。一つの組織が幾つかの生産の原理を併用することは、容易ではないが可能である。しかし、生産の原理そのものを混合してしまってはいけない。

マネジメントたる者は、自らの仕事とプロセスとを分析する必要がある。そして生産の原理それぞれの特質、限界、適用の条件を理解していなければいけない。

プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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