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2017/07/24

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スペシャルコラムドラッカー再論

第83回

仕事を生産的なものにする、管理手段とツール(後編)。

  • マネジメント
前回に続き、仕事を生産的なものにする「管理手段」と「ツール」について。
今回は、ドラッカーの語る「ツール」に触れてみたい。

しかし、ドラッカーが「ツール」について述べるというのも、少し驚きと違和感を感じはしないだろうか?

「仕事を生産的なものにする最後の段階が、ツールを使うことである。異なる仕事には異なるツールが必要である。単純なツールから複雑なツール、小さなツールから巨大なツールまで無数にある。(中略)マネジメントたる者は、製造にせよ、情報処理にせよ、知識労働にせよ、ツールについて要求されるものは理解しておかなければならない」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)

知識労働の生産性を語るドラッカーは、肉体労働を越えて、執筆当時「オートメーション化」と言われた各種の機械化の進展・発展に当たっての効果的導入と活用に目をつけている。
ここで述べられているのは、そのことだ。

「第一に、ツールは大きいからよいとは限らない。最小の労力と、最小の複雑さと、最小のエネルギーで必要な仕事を行うツールが最も優れている。より大きなツールはないかなどと考えてはならない。最も簡単で最も小さく、最も軽く、最も易しいツールは何かと考えなければならない」
「第二に、ツールは実用的でなければならない。仕事がツールのためにあるのではない。ツールが生産のためにある。ところがこの原則は、今日、コンピューターのユーザーによって破られている。彼らはコンピュータの能力の増大に魅せられて、必死に用途を考える。その結果、誰も欲せず、必要とせず、使い道のない情報を生み出させている。ツールを動かし続けることが目的になっている。だが、仕事に必要な情報は何も手に入らない」
(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

いやはや、まさに。ERPの導入や昨今のXXTechにおいて各社で頻発していることではないだろうか。

ドラッカーは、「ツール」導入において、注意すべき危険を2点指摘している。

(1)人を機械の一部にする危険。人は機械の部品としてはお粗末で、人を機械に組み入れ機械の仕事をさせようとすると、機械の働きまでお粗末なものとなる。
(2)働く者同士に亀裂をもたらし、働くことを通じての絆という人間本来の欲求の達成を妨げる危険に留意しなければならない。

折しもAI、IoT等の導入に焦点が当たり続けている今、古くて新しいお題、「人が機械を使うのであって、機械に人が使われてはならない」ということを踏まえたツールの使い方を、我々経営者は意識し、事業設計、業務設計を図らねばならない。

プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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