TOP スペシャルコラムドラッカー再論 仕事を生産的なものにする、管理手段とツール(前編)。

2017/07/18

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スペシャルコラムドラッカー再論

第82回

仕事を生産的なものにする、管理手段とツール(前編)。

  • マネジメント
前回、「プロセスとしての生産の原理」について見た。
今回と次回、仕事を生産的なものにする「管理手段」と「ツール」についてのドラッカーの見立てについて見てみたい。

「仕事とはプロセスである。プロセスはすべて管理しなければならない。したがって、仕事を生産的なものとするには、仕事のプロセスに管理手段を組み込まなければならない」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)

ドラッカーは、特に次の点に関して管理手段を組み込んでおく必要があると言う。

(1)プロセスの方向性
(2)プロセスの質
(3)プロセスの産出量
(4)プロセスの保守と安全
(5)プロセスの効率

あらゆる仕事が管理を必要とする。そこに標準などない。
しかし、管理には共通の条件があるとドラッカーは述べている。

第一に、仕事のプロセスを管理することは、仕事を管理するということであって、働く人を管理することではない。管理とは、働く人のツールであって、人の主人となるべきものではない。さらにはそれは、働くことの妨げとなってはならない。

「管理はすべて経済的な視点から行うべきものであって、倫理的な観点から行ってはならない。それは、仕事が高い水準でスムーズに行われるようにするものである。最小の労力で基準からの逸脱を防げばよい。(中略)プロセスを維持するための最小の管理とはどのようなものかを考えなければならない」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

第二に、管理手段はあらかじめ設定しておかなければならない。基準と基準からの乖離の許容範囲を決めておく。

「管理とは本質的に例外管理である。基準からの乖離が大きな場合に限り、管理が作動するのでなければならない」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

第三に、管理は仕事からのフイードバックによって行わなければならない。仕事自身が管理のための情報を提供するようにしておく。

「仕事そのものを常時チェックしていかなければならないというのでは、管理はできない」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

重要なこと、気をつけるべきこととしては、管理手段が管理できるのは定型的なプロセスだけだということであり、管理は例外を見分けなければならないということだ。
それらの例外を、定型的に処理することはできない。個別処理となる。

「管理は、例外によって全プロセスが邪魔されないようにすることだけである」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

前回、4つの生産の原理((1)個別生産、(2)リジッド(限定的)大量生産、(3)フレキシブル(適応的)大量生産、(4)プロセス生産)を見たが、この(2)〜(4)についての管理手段を明らかにし、残された(1)についての個別プロフェッショナリティ対応を図ることで、生産性の向上と質、顧客への提供付加価値を担保することが、事業経営として抑えるべきこととなる。

プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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