2017/07/03

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スペシャルコラムドラッカー再論

第80回

仕事の分析

  • マネジメント
前回、ドラッカーは仕事を生産的なものとするために、次の4つのものが必要だと述べていることをご紹介した。

(1)第一に、仕事の分析。我々はまず、仕事に必要な作業と、その順序と、そこに必要とされるものを知らなければならない。
(2)第二に、プロセスへの統合。我々は作業を集めて、生産のプロセスとして編成しなければならない。
(3)第三に、管理。その生産のプロセスの中に、方向づけ、質と量、基準と例外の管理手段を組み込まなければならない。
(4)第四に、ツール。

今回はまず、仕事の分析について見てみたい。

「(多くの人が仕事の分析方法について)理解していると信じている。そして彼らは、仕事の分析とは、基本的に次の四つの段階からなると答える。
1)必要なプロセスを明確化する。 2)作業をプロセスに統合する。
3)作業の一つひとつを設計し直す。必要に応じて、ツール、情報、資材を与える。 4)作業をまとめて職務とする。
(中略)しかしこれらは、仕事の分析が効果をあげるためには、間違った答えである。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)

最初の間違いは、仕事の分析にとって最も重要なステップが抜けていることにあるとドラッカーは指摘する。

「仕事の分析は、必要な作業を明確にすることから始まるのではない。望ましい最終製品を規定することから始まる。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

仕事の分析は「何を生産したいか。そのための仕事は何か。効率的かつ生産的に生産するには最終製品はいかなる設計でなければならないか」に答えることから始めなければならないのだ。
最終製品でなく個々の仕事からスタートすれば、「無駄な仕事を見事に設計する」という結果になりかねない。

「したがって仕事の分析は、製品とプロセスの設計段階からスタートしなければならない。仕事を易しくすることを中心に最終製品を設計することはできない。最終製品の仕様は、ユーザーのニーズと価値観によって決まるのであって、生産者のニーズと価値観によって決まるのではない。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

そして、この仕事の分析の 4)「作業をまとめて職務とする」は、仕事の分析ではないものであり、「マネジメントたる者は、仕事の分析と職務の分析は違うものであることを知らなければならない。一方は仕事の論理に関わることであり、もう一方は働くこと、すなわち労働に関わることである」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)。

仕事の分析を、一つの完結した仕事として見ることも間違いだとドラッカーは指摘する。仕事の分析は、あくまでも仕事を生産的なものとするための一歩にすぎないのだ。

プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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