2019/11/13
1/1ページ
成功する経営者は皆、多読家。「TERRACEの本棚」
第76回
複雑怪奇! 肥大化したネット広告の世界にNHK取材班が迫る
- 組織
- 経営
- 井上 雄介氏 株式会社NHK出版 放送・学芸図書編集部 チーフ・エディター
成功する経営者は皆、多読家。
「TERRACEの本棚」では、成功している経営者が注目している、読んでいる書籍をご紹介してまいります。
今回は、『暴走するネット広告 1兆8000億円市場の落とし穴』。
本書の編集を手掛けられた、NHK出版の井上雄介氏に見どころを伺いました。
「急成長を遂げ、年間売上1兆8000億円に迫ろうとするネット広告市場。近いうちに地上波テレビを追い抜き、『広告の王者』になると目されている」
本書のカバーに掲載したリード文の抜粋です。
では、「急成長」とは具体的に、どのぐらいの期間に、どのくらいの規模で市場が拡大したことを指すのでしょうか?
ここでは、インターネット広告がどのように発展してきたかを数字でたどったうえで、この本のポイントを説明したいと思います。
広告最大手・電通が毎年発表する、「日本の広告費」。これは1月から12月までに日本国内で使われた広告費(広告媒体料と広告制作費)の統計で、1947年に開始されています。
同資料を参照して、ネット広告が「1兆8000億円市場」となるに至ったプロセスを少しさかのぼってみましょう。
ネット広告が、初めて「日本の広告費」に登場したのは、1996年のこと。「Windows 95」が発売され、「日本のインターネット元年」と評されることもある95年の翌年です。96年の売上は16億円。ちなみに同じ年のテレビ広告の売上は1兆9162億円、新聞は1兆2379億円です(以下、「広告費」と同じ意味で「売上」という言葉を使っています)。
ネット広告費は翌97年に60億円、98年には114億円と大幅に売上が増えています。その後も、まさに指数関数的な成長を遂げ、2003年には1183億円となりました。
2009年には、7069億円の売上を記録。いわゆる「四マス媒体(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)」のうち、テレビに次ぐ二番手の新聞(同じ年の売上6739億円)を、ここで超えています。
2014年、前年の9381億円から12.1%増の1兆519億円となり、ついに1兆円を突破(テレビ1兆9564億円、新聞6057億円)。この年から5年連続で二桁成長を記録します。
そして、2018年。
ネット広告費は、前年の1兆5094億円から、16.5%増の1兆7589億円となりました。
「四マス」のうち、ネット広告を上回るのはテレビだけ。地上波テレビと衛星メディア関連を合わせたテレビメディアの同年の広告費は1兆9123億円で、地上波テレビ単体で見ると1兆7848億円となり、まさに、ネット広告がテレビに肉迫していることがわかります。
新聞は4784億円、雑誌は1841億円、ラジオは1278億円。その差は歴然です。
96年の売上16億円と比較すると、実に1099.3%増。
22年という期間を考えると、驚異的な数字です。こうして統計データを簡単におさらいしただけでも、インターネット広告市場がまさに「急成長」を遂げたことが実感でき...
こちらは会員限定記事です。
無料会員登録をしていただくと続きをお読みいただけます。