TOP 社長を目指す方程式 ウィズコロナ、オンラインでも 部下の当事者意識を起動する方法

2020/11/24

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社長を目指す方程式

第53回

ウィズコロナ、オンラインでも 部下の当事者意識を起動する方法

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今回の社長を目指す法則・方程式:

スティーブ・バッコルツ氏+トム・ロス氏「当事者責任=業績目標+期待される行動」

 

足元では第3波の全国的なコロナ感染再拡大が懸念される中、上司の皆さんにはウィズコロナでのマネジメントをまだまだ引き続き求められる状況が続きますね。リモートワーク下、試行錯誤しながら部下の業務管理やモチベーションサポートに努めていらっしゃることと思います。

しかし全てを対面でヒューマンタッチに解決する訳にはいきません。ある意味これまで以上に、部下の主体性を求めざるを得ない状況でもあります。
なんとか部下たちに意欲高く自走して欲しい。では上司として、部下の当事者意識をどう起動させ、高めれば良いのでしょうか。

業績管理 vs 従業員エンゲージメント管理

この連載でも触れてきましたが、ウィズコロナ、リモートワークでの働き方と相まって、ジョブ型雇用の導入ということも非常に多く議論に上がるようになりました。
いずれを見ても、より明確な業務管理・業績管理が必要となっており、読者上司の皆さんもこれまで以上に業績目標管理に重点を置いたコミュニケーションを部下たちとされていらっしゃるのではないでしょうか。

一方ではモチベーション、従業員エンゲージメントについても話題に上ることが多くなりました。これはコロナ以前からのムーブメントでもありました。組織活力が業績に直結すること、またコロナ直前までの求人市場の加熱で、採用面でも退職防止の面でも従業員エンゲージメントが高いことがクリティカルであるという認識が、経営者や人事に広まったという側面もあります。

業績管理と従業員エンゲージメント管理。

私も最近、折々ご相談やご質問(あるいはぼやき…)をクライアントや知人友人の経営者からされます。「業績管理をキツくすると、従業員のモチベーション、エンゲージメントは落ちざるを得ないし、従業員エンゲージメントをあげようと社内施策を行うと、どうしても業績コミットを強く言いにくくなります。どうすればよいのでしょうか」と。

一般的に二項対立、トレードオフの関係として見られている業績管理と従業員エンゲージメント管理。このバランスを、いったいどう取るのがベストなのか——。

当事者責任(主体性)発生の方程式

実はここに、救世主のような理論が存在しているのです。

ネブラスカ大学・組織社会学博士のスティーブ・バッコルツ氏と、ウイルソン・ラーニングワールドワイド社・代表取締役社長COOのトム・ロス氏が、長年に渡り、エンゲージメントの高い組織カルチャーについて研究してきた結果によれば、部下の主体的関与、エンゲージメントの高い状態での当事者意識を醸成するには、「業績目標」と「期待される行動」の2つを明確にすることが重要だといいます。

当事者責任=業績目標+期待される行動

彼らが行った大規模調査によれば、従業員に「あなたたちのエンゲージメントが高まるためには、経営層に何をしてもらう必要がありますか」という質問に対して、最も多かった回答は「私に求めていることを明確にして欲しい」でした。「自分は何に注力すべきなのか」「経営層や上司は自分たちに何を求めているのか」など、今後についての答えを求めているのです。

自分は何に対して責任を負っているのか。それはいかなる背景や意味合いにおいてか。これをすっきりと理解できている従業員は、自然とエンゲージメントは高く、当事者責任をしっかりと持ってくれるのです。

確かに、読者上司の皆さんも、自分ごととして思い返してみれば、自分のやる気が削がれていたときというのは、何をすれば良いのか分からない、どう評価されるのが分からない、この数字を達成したらどういう意味があるか分からない、といった、自分の役割の不明瞭さ、あるいはその納得性が得られないときだったと思います。ここをはっきりさせてあげれば良いのです。

バッコルツ氏とロス氏は、このことから次のように述べています。

「従業員のエンゲージメントを取り戻すうえで、より強力な要因は、責任とパフォーマンスに対するフィードバックが上司のような外因からくるのではなく、本人が、自分に責任を課し、自分自身のパフォーマンスをモニタリングする能力をもつことである」(『成長企業が失速するとき、社員に”何”が起きているのか?』日経BP・刊)

遠慮なく「期待+行動+達成」を要望する

「なんだ、それでいいのか」読者上司の皆さんもひと安心。「でも、ちゃんと目標設定やってるんだけどな。なんでうちは、今ひとつメンバーのエンゲージメントが上がらないんだろう…」。

そう疑問を抱く方もいらっしゃるかもしれませんね。最もありがちなケースにひとつ触れておきますと、自分たちが達成を期待されている目標については上司からはっきり聞いている、あるいは目標設定会議があるのだけれども、では、その目標を達成するために<どのような行動を取ること>が期待されているのか。また、<なぜ、その行動を取ることが重要なのか>については、なんら聞いていないという場合が、色々と伺っていますと結構多くあるように思います。

バッコルツ氏とロス氏は、この<行動の明確化>について、業務パフォーマンスに直結する行動=戦略戦術、と、価値観に繋がる行動=企業のバリュー、との2つがあり、それぞれ共に重要であると述べています。

「上司である私たちは、部下に対する期待を公然と明言し、その期待を達成する責任を部下に課さなければいけないのだ。明文化された『業績目標』と、明言された『期待される行動』のつながりを部下全員に理解させなければならない」。バッコルツ氏とロス氏は、こう強調します。

「業績目標」と「期待される行動」について、部下たちがどのような責任を課されるかを上司が明確にすれば、部下は自分事として責任を担えます。部下が責任を果たしたら、それを充分に報いることで、当事者意識の強い、エンゲージメント高いチームが完成されるのです。

「リーダーの責任は、メンバー一人ひとりの当事者責任がたいへんに重要な要素であるというカルチャーを築くことである。混乱をきたすような変化の結果、メンバーが方向性を喪失してしまったら、<業績目標>と<期待される行動>という形で「メンバーが何に責任を負うのか」を明確にすることが、メンバーのエンゲージメントを取り戻す方策である」(同上書)

ピグマリオン効果を研究したハーバード・ビジネススクール教授のJ.スターリング・リビングストンによれば、「リーダーが部下に求めること」と「部下がどう扱われるか」が、部下のエンゲージメントとパフォーマンスの大半を決めると言います。

リビングストンによると、優秀な経営者やリーダーが持つ特性は、部下たちに高いパフォーマンスを達成することを求めるカルチャーを創り出す力だそうです。
人は誰でも、期待される、扱われるように振る舞う、と。

つまり、ベストを望む上司だけが、ベストなチームを実現できるのです。ウィズコロナに縮こまらずに、ぜひ、部下への期待値・要望の高い上司で行きましょう!

 
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※この記事は、「SankeiBiz『井上和幸 社長を目指す方程式』」の連載から転載したものです。
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プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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