2020/10/27
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社長を目指す方程式
第51回
30周年を迎えた「7つの習慣」 志高きリーダー達を世界中に輩出
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- 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
今回の社長を目指す法則・方程式:スティーブン・R・コヴィー「7つの習慣」 |
「7つの習慣」が30周年を迎えました。それを記念して『7つの習慣 30周年記念版』(キングベアー出版)が刊行されています。
嘘偽りなくこの30年間、「7つの習慣」は世界中に多くの志高きリーダー達を輩出してきたと思います。日本においても同じでしょう。また、人生を豊かに生きるための知恵を、計り知れないくらい多くの人たちに提供し続けてきていることも、「7つの習慣」のすそ野の広さと特徴といえると思います。今回はそんな「7つの習慣」を、私なりに振り返ってみたいと思います。
◆読んだこと・受けたことがなくても、誰もが知っている
『7つの習慣』を読んだことのあるという上司の皆さん、あるいは「7つの習慣」研修を受講したことのあるという上司の皆さんは、どれくらいいらっしゃるでしょう? 「7つの習慣」の凄さは、読んだことのある・研修受講したことのある人たちの<外側>にあるのではないか。そんな風に思います。
たとえ「7つの習慣」自体を詳細に知らなくても、「WIN-WIN」はおそらくほぼすべての上司の皆さんが知っている、日常でも使っていると思います。
「WIN-WIN」「重要かつ緊急ではないこと(第II領域)に時間を割く」「人間関係における信頼口座」「シナジー、第3の案を探す」「ガチョウと黄金の卵の話」「木こりと斧の話」など、7つの習慣から広まった教訓は多くあります。それをご自身の教訓や座右の銘にされていらっしゃるかたも多いはず。
私自身は20代半ば、リクルート在籍時に「7つの習慣」の社内研修を受ける機会を得て、「大きな石を入れる」「理解してから理解される」「刃を研ぐ」などに鮮烈なメッセージを受け取った一人です。これが自分の社会人としての在り方、行動の仕方のベースとなっています。
◆「私的成功」で自立を果たす
読者上司の皆さんに、早わかりで「7つの習慣」について、ご紹介しましょう。この項だけお読み頂ければ、骨格と全体像を抑えていただけること間違いありません!
「7つの習慣」とは、「私的成功」を収めるための3つの習慣(第1の習慣~第3の習慣)と「公的成功」を収めるための3つの習慣(第4の習慣~第6の習慣)、その状態を継続・強化し続けるための習慣(第7の習慣)から成ります。
まず「私的成功」のための3つの習慣です。
第1の習慣「主体的である」
外界に反応して動かされるのではなく、自らが主体的に選択し動くこと―率先力が、すべての土台となる。
第2の習慣「終わりを思い描くことから始める」
すべてのものは二度作られる。まず頭の中で創造され(第一の創造)、次に実際に形あるものとして創造される(第二の創造)。あなた自身の「第一の創造者になる」ことが主体的人生の基盤となる。その際、「原則中心」の生き方を描く(ミッション・ステートメント)。
第3の習慣「最優先事項を優先する」
時間管理のマトリクス4象限の中で、「第Ⅱ領域(重要×緊急でない)」のことに時間を投資する。そのために「第Ⅲ領域(重要でない×緊急)」「第Ⅱ領域(重要でない×緊急でない)」のことに対して「NO」と言う。
◆「公的成功」で相互依存に至る
次に「公的成功」のための3つの習慣、そして第7の習慣です。
第4の習慣「Win-Winを考える」
約束を守り、期待に答え、誠実さを示し、日頃から「信頼口座」を貯める。Win-Win or No Deal―双方にメリットのある解決策が見つからなければ、お互いの意見の違いを認め「合意しないことに合意する」。
第5の習慣「まず理解に徹し、そして理解される」
共感をもって傾聴する。「処方箋を書く前に診断をする」(自分の解釈をする前に、事実を集める)。そのうえで理解されるためにエトス(信頼)・パトス(情熱)・ロゴス(論理)を使う。
第6の習慣「シナジーを作り出す」
第4の習慣、第5の習慣を出動することで、クリエイティブな「第3の案」を探し出す。第3の道を信じる。
第7の習慣「刃を研ぐ」
成果(Production)を生み出し続けるために、成果を生み出す能力(Production Capability)への投資を行う。最新再生には「観点(精神)」「自立性(知性)」「つながり(社会)」「体調(肉体)」の4つの側面がある。
こうして、私たちは「私的成功」により依存から脱して自立を果たし、更に「公的成功」によって自立から相互依存へと至ります。「刃を研ぐ」ことで、それを維持・発展させることが<成長の連続体>だとコヴィー博士は説いたのです。
◆人として、リーダーとしての礎を築くOS的役割と効果
思い返せば、自立を果たした上で更に公的成功によって「相互依存」に至る(自立よりも相互依存状態のほうが望ましい)という考えにも、最初に「7つの習慣」に触れた際に、ハッと気づかされたものでした。
リーダーシップやマネジメントの古今東西の理論や教訓で、他社とのかかわりなどを説くものは多くありますが、「7つの習慣」ほど具体的、実践的、かつ現実的にどのように他者とかかわりを重ね、積み上げればよいのかを指南するものは、いまに至ってもなおそう多くはないでしょう。
一方では、ベースとしての自己研鑽についても、一生記憶に残り、しかも実用的な視点と方法をコヴィー博士は多く残してくださいました。
「刺激と反応の間には選択の自由があるのだ」「自分自身の影響の輪を広げよう」「P(成果)/PC(成果を生み出す能力)バランスを保とう」——私個人としても、これらの考え方・あり方が自分自身の心身の健康をキープし続けてくれているのだと実感しており、若いときに「7つの習慣」と出逢えたことに感謝するばかりです。
最後に、「7つの習慣」の「習慣」について、そもそもコヴィー博士はどのように捉えていたのか?
コヴィー博士の「習慣」の定義は、「知識、スキル、意欲の三つが交わる部分」です。知識は、何をするのか、なぜそれをするのかという問いに答える理論的なパラダイム。スキルは、どうやってするのかを示し、意欲は動機であり、それをしたいという気持ちを示す。人生において効果的な習慣を身に着けるには、これら3つすべてが必要なのだとコヴィー博士は言います。
さて、読者上司の皆さんは、3つ揃っていらっしゃいますか?
* * *
「激流の時代に、翻弄され流されるのではなく、自ら舵を取る」ために提示された「7つの習慣」。くしくも新型コロナ禍において、経験したことのない世界へと世界中の人たちが送り込まれ、その中で各社各様の闘いを強いられているこの状況ほど、<激流の時代>という言葉が合致する時はないですよね。
そういう意味でも、今こそ改めて上司の皆さんが「7つの習慣」を再発見すべき、絶好のタイミングではないか。そう思います。
※この記事は、「SankeiBiz『井上和幸 社長を目指す方程式』」の連載から転載したものです。
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