TOP 社長を目指す方程式 コロナ後の切り札として脚光 「発見力」を高める5つのスキル(後編)

2020/09/29

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社長を目指す方程式

第49回

コロナ後の切り札として脚光 「発見力」を高める5つのスキル(後編)

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今回の社長を目指す法則・方程式:

クレイトン・クリステンセン「イノベーションのDNA」

 

前回(前編)の記事で、「発見力」を高める5つのスキルとは何か、いかに発揮されるについて、まずご理解頂きました。

「なるほど、5つのスキルのことは分かった。でも、自分はそのようなスキルを持っていないし、どうすればよいのだろう」、そんな読者の上司諸氏もいらっしゃるかもしれません。

ご安心ください。クリステンセン氏らは、この5つのスキルは決して「天性のセンスによるもの」ではなく、個人としても意識して身に付けることができ、組織としても培うことのできるものだと言います。

◆稀代のイノベーターたちが共通して語った「3Pの枠組」

クリステンセン氏らは『イノベーションのDNA』を著すにおいて、アマゾンのジェフ・ベゾス、セールスフォースのマーク・ベニオフなど世界を代表するイノベーションを起こした錚々たる経営者(その多くが創業者であることにもイノベーターの秘密・秘訣は関連づけられているようです)に直接インタビューを行い、また故スティーブ・ジョブズ、リチャード・ブランソン、ハワード・シュルツなどが残した多くの発言記録や自伝などからも引用を試みて、イノベーターが共通して発揮する「発見力」とそれを高める5つのスキルについて見出しました。

これらのイノベーションに秀でた創業者たちに、イノベーティブな組織やチームを作る秘訣は何ですかと尋ねると、彼らからは判で押したように同じ答えが返ってきたと言います。

「彼らは自分に似た(つまりイノベーションに秀でた)人材を集め、自らも活用するイノベーションに必要なスキル(質問力、観察力、ネットワーク力、実験力)を高めるプロセスを導入し、哲学(社員の一人ひとりに、イノベーションを起こし、スマート・リスクをとるよう奨励する文化)を育むことの重要性を一貫して力説した。また最もイノベーティブな企業ランキングに入った、その他の企業の観察結果からも同じことが明らかになった」(『イノベーションのDNA』)

ここからクリステンセン氏らは、これらを組織的に高めるには「人材 People」「プロセス Process」「(企業の)哲学 Philosophy」の3つからアプローチすればよい(「3Pの枠組」)ことを明らかにしました。

◆あなたの会社・組織のイノベーティブ度チェック

読者の皆さんが、自社や自組織・チームがイノベーティブであるか、あるいは転職先がイノベーティブであるかをチェックするには、この3Pを確認するのがよいでしょう。

・経営陣や組織リーダーが自らイノベーションの陣頭指揮を執り、発見力に優れている(人材)

・イノベーションプロセスのすべての管理者レベル、事業分野、意思決定段階に発見力指数の高い人材が適切なバランスで配置されるように常に気を配っている(人材)

・従業員に関連付け、質問、観察、ネットワーキング、実験を明確に促すプロセスがある(プロセス)

・発見志向型の人材を採用、養成、優遇し、昇進させるためのプロセスがある(プロセス)

・企業、組織が4つの指針となる哲学によって支えられている(哲学)

(1)イノベーションは全員の仕事であって、研究開発部門だけの仕事ではない

(2)破壊的イノベーションにも果敢に取り組む

(3)適切な構造をもった少人数のイノベーション・プロジェクト・チームを数多く用いる

(4)イノベーションの追求においてはスマート(賢い、賢明な)・リスクをとる

皆さんの会社や組織はどうでしょう? 上司の皆さんご自身は、こうしたチームを作っていますか? 作ろうと試みてるでしょうか?

◆発見力、5つのスキルの具体的な強化方法

さて、では上司である皆さん自身が「発見力」を磨くには、その5つのスキルを強化するにはどのようなことをすればよいのか?

クリステンセン氏らは、私たちが発見力を磨くには、「優先順位、時間の使い方を見直し、発見・実行・人材開発に時間を当てる」「発見力を自己診断する」「イノベーションに関わる切実な問題を探す」「発見力を練習する」「コーチを見つける」ということに取り組むのがよいとアドバイスします。

コラムの紙幅から仔細については省略しますが、そもそもどのようなイノベーションを起こしたいのか、自己テーマを設定する。発見力・5つのスキルを使う時間を確保、投資する。コーチとなりうる人からのアドバイスも受けながら、徹底的に5つのスキルを使ってみる、ということですね。

『イノベーションのDNA』では、

・関連づける力を伸ばすには、強制的に新しい関連づけをしてみる/別の会社になりすましてみて自分の会社と提携や協業をするならと考えてみる/喩えを考える/思考法の「おもしろ箱」(アイデアメモなど)や「SCAMPER」を使ってみる。

・質問力を伸ばすには、「いまどうなのか(誰、何、いつ、どこ、どのように)」「なぜこうなった?」で対象の説明を、「なぜなのか?」「なぜ違うのか?」「もし〜だったら」「どうすれば?」でその対象を破壊する説明をしてみる。

・観察力を高めるには、顧客(個人、企業)を観察し「片付けるべき用事(ジョブ)」を特定する/琴線に触れたもの(サプライズ)を観察する/五感をフルに活用する。

・ネットワーク力を磨くには、人脈の幅を広げる(自分と異なる背景、考え方を持つ人たちへ)リストアップをする/そうした人たちと会うためのランチ、会食、会議、イベントなどの計画を作り、実行する。

・実験力を培うには、物理的障壁を越える/知的境界を越える/新しい技術を身につける/製品を分解する/試作品をつくる/新しいアイデアを試験的に導入する/トレンドを探す。

このような具体的アクションが紹介されています。盛りだくさんで到底一気にはできませんが(笑)、ぜひご自身で特に強化されたいものから、ぜひ日常の中に少しずつでも取り入れていただければ、新しい気づきに折々出逢えるようになると思いますよ。

   *         *         *


 
「マネジメントの父」ドラッカーは、イノベーションについて「変化の兆しを捕まえる」「変化はコントロールできない。できることは、その先頭に立つことだけである」と言いました。この大きな時代の変化局面に、ぜひ、発見力を強化して、変化の兆しを捕まえ、その先頭に立ちましょう。それが上司としてのあなたを次の時代に、より上位のポジションへと引き上げることになるのは間違いありません。


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※この記事は、「SankeiBiz『井上和幸 社長を目指す方程式』」の連載から転載したものです。
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プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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