TOP 社長を目指す方程式 コロナ後の切り札として脚光 「発見力」を高める5つのスキル(前編)

2020/09/15

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社長を目指す方程式

第48回

コロナ後の切り札として脚光 「発見力」を高める5つのスキル(前編)

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今回の社長を目指す法則・方程式:

クレイトン・クリステンセン「イノベーションのDNA」

 

いま、あらゆる業種業界が、自社の事業やサービス・商品について「ウィズコロナ・ポストコロナ仕様として、何が正しいのか」を懸命に模索しています。また私たち働く一人ひとりが、ソーシャルディスタンスを保ちながらいかに適切に業務を行うかについて試行錯誤しています。
大きなことから足元のことまで、今私たちに求められているのはビフォーコロナの既成概念、固定観念から脱して物事を考えたり正解を見つける力です。

◆「答える力」だけでは立ち行かなくなった現在

このような状況の中、「答える力」(課題解決力)以上に「見つける力」(発見力)に光が当たっています。決して「答える力」(課題解決力)が不要になったということではありません。それだけでは済まなくなっている、既に存在している課題やテーマを解決するだけではVUCAと言われる大激変・不透明な時代に生き残れなくなっているということです。

「地頭力」「アナロジー思考」の細谷功さんはこの8月に『問題発見力を鍛える』を発刊。今回メインで取り上げる『イノベーションのDNA』の共著者、ハル・グレガーセン氏の『問いこそが答えだ!』も日本語版が3月に発売されています(原書は2018年に刊行)。そもそもこの数年、デザイン思考に光が当たってきたのも、分析思考では解決しえない新たな着想や発見がビジネスのあらゆる側面で必要となりつつあったことからだと思われますが、それが今回の新型コロナ禍によって加速していると言えるでしょう。

そして今回、「見つける力」をテーマに上司の皆さんにぜひともご紹介したい法則・方程式が、クレイトン・クリステンセン氏の「イノベーションのDNA」です。クリステンセン氏らは同書の中で、優れたイノベーターは「発見力」が高く、その「発見力」を高めるには5つのスキルが発揮されていることを明らかにしました。

◆「発見力」の土台は、<あちら>と<こちら>を「関連づける力」

それら5つのスキルは、「関連づける力」「質問力」「観察力」「ネットワーク力」「実験力」です。

イノベーターは、決して無から有を生み出している訳ではありません。通常では結びつかないような<あちら>と<こちら>のものを、「関連づけ」の認知スキルをふんだんに働かせて結びつけることで新たなものを見つけたり生み出したりしています。
関連づけが起きるのは、脳が目新しいインプットをさまざまな形で組み合わせ、理解しようとするときです。この能力のおかげで、イノベーターは一見無関係に見える疑問や問題、アイデアを結びつけ、新しい方向性を見出すことができるのです。

そもそも画期的な飛躍的前進は、多様な領域や分野が交わるところで見られることが多いですね。著述家のフランス・ヨハンソンは、この現象を「メディチ現象」と名づけました。ルネサンス期のメディチ家が彫刻家、科学者、詩人、哲学者、画家、建築家などと様々な分野から優れた人材をフィレンツェに呼び集めたことで世界史上最も革新的、創造的な時代、ルネサンスが開花したことに呼び擬えたものです。

イノベーターは次の4つのスキルを駆使して、イノベーティブなアイデアの元になる<アイデア成分>の在庫を増やし、「関連づける力」を誘発するのです。

◆イノベーターが駆使する4つのスキル

まず、イノベーターは質問の達人で、物事の探求に情熱を燃やします。彼らは現状に意義を唱えるような質問をよくします。代表的には故スティーブ・ジョブズ氏を思い浮かべる方が多いのではないかと思いますが、有名無名を問わず新たなサービスやソリューションを立ち上げるベンチャー経営者などは、それぞれが世の中の「不」や社会課題をそのままにしない姿勢から起業されているものです。

イノベーターはまた、飽くことを知らない観察者でもあります。周りの世界——顧客、製品、サービス、技術、企業などに注意深く目を光らせ、観察を通して新しいやり方の元になる洞察やアイデアを得ています。一般の人たちと同じ生活空間にいながら、私たちは見過ごしてしまうことをイノベーターは見逃しません。この連載で以前、「カラーバス効果」をご紹介したことがありますが、イノベーターの頭と心には常に自身のテーマのアンテナが立っているため、それに環境に存在している情報がフックされるのです。

そもそもイノベーターは、多様な背景や考え方をもつ人たちとの幅広いネットワークを通じてアイデアを見つけたり試したりするのに、かなりの時間と労力を費やしているものです。さらにイノベーターは、常に新しい経験に挑み、新しいアイデアを試しています。頭の中で、また経験を通して、常に世界を飽くことなく探求し様々な仮説を検証しているのです。こうした「ネットワーキング」や「実験」に意識無意識、一定以上の時間(とお金)を使う生き物がイノベーターなのですね。

◆上司は「質問力」格差社会に飲み込まれつつある

いま、上司のみなさんにとって、特に「質問力」の有無が、職場における成果の出し方や、その結果としての昇進昇格において、非常に大きな格差を生みつつあるように私は感じています。目の前の顧客ニーズや業務課題、あるいは自分の失敗とその改善策に、気づける人と気づけない人とで、仕事力に明らかに大きな差が出ています。

役職を問わず、会議や商談、あるいは転職面接などにおいて、質問ができない人というのは、今回ご紹介したようなスキルが欠けている、情報のアンテナが立っていないケースがほとんどでしょう。そうした人は、相手から見て、「大丈夫だろうか、この人?」「本当に理解しているのかな」「何かあった時にちゃんと対応できるのだろうか」という疑問と不安を抱かれてしまいます。これでは期待や信頼を獲得することは覚束ないですよね…。

一方で、本質的、的確な質問をしてくる人というのは、相手にとって「ああ、ちゃんと理解してくれている」「おお、そんなところにも気がつくのか」「なるほど、確かにその部分も確認した方がよいな」と安心、信頼できるものです。

そもそも質問できる力というのは、その人の好奇心や現状を変えたいという変革の意志に比例しますので、結果として質問力の高い人が学習力、成長力も高く、リーダーシップも発揮することになるのです。

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いかがでしょう。「発見力」を高める5つのスキルとは何か。いかに発揮されるかについて、まずご理解頂きました。
「なるほど、発見力を高めるために5つのスキルが必要なことは分かった。でも、自分はそのようなスキルを持っていないし、どうすればよいのだろう」、そんな読者の上司諸氏もいらっしゃるかもしれません。

ご安心ください、この5つのスキルは決して「天性のセンスによるもの」ではなく、意識して身に付けることのできるものです。次回、どうすれば5つのスキルを高めることができるかについて見てみたいと思います。


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※この記事は、「SankeiBiz『井上和幸 社長を目指す方程式』」の連載から転載したものです。
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プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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