TOP 社長を目指す方程式 非常事態下だからこそ…“戦略的”気抜き・いい加減のススメ

2020/12/08

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社長を目指す方程式

第54回

非常事態下だからこそ…“戦略的”気抜き・いい加減のススメ

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今回の社長を目指す法則・方程式:

マーカス・レイクル教授「デフォルト・モード・ネットワーク」

 

新型コロナウイルス第3波の感染拡大が気にかかる日々ですが、長引くコロナ禍でお疲れモードの上司の皆さんが増えていることでしょう。危機対応で四六時中、気持ちが休まらない方も少なくないのではないかと思います。
今回はそんな読者上司の皆さんに、「気を抜いても大丈夫」「ラフにやっても心配ない!」という心理学をご紹介します。

◆創造性を発揮するには“戦略的に”ぼーっとせよ?

「とにかくこのコロナ禍は非常事態ですからね、<常在戦場>(常に戦場にいるようにことに当たれ)ですよ」

責任感の強い上司の皆さんは、ウィズコロナ下、いっときたりとも気を緩めてはいけないと思われていることでしょう。ところが、あなたのそのような姿勢は百害あって一利なしかもしれません。

特に、何かをしっかり考えたい、あるいは思考を巡らせてアイデアを出したい。そのようなときには、根を詰めて考えるよりも、ぼーっとしていた方が良いようなのです。

実はなんと、脳は忙しくしているときよりも、何もせずぼーっとしているときのほうが2倍のエネルギーを使っているそうです。これはワシントン大学の神経学者、マーカス・レイクル教授らが提唱した「デフォルト・モード・ネットワーク(Default Mode Network)」によって明らかになったことで、研究の結果、脳が使うエネルギーの70%以上がこの回路で使われているとも言われているのです。

そもそも私たちが意識的に考え事をしているときは、そのことに関連する脳の特定の部位の動きが活発になり、脳のエネルギーがそこに集中します。この状態は、脳の使い方としてはあまり効率が良くないのです。
それよりもぼーっとしている状態のほうが、エネルギーが脳全体に分散され、多くの部位に届くことで有機的なつながりが生まれてくる。これによってそれまで結びつかなかったようなもの同士が結びつき、新しい発想や、いいアイデアが瞬間瞬間に出てくる。これがひらめきの構造なのです。

頭を使った後でボーッとすると、脳の中でつながりが作られる。
私たちが、ぼーっとしている時間帯に脳は活発に動き、それまでにインプットした情報を整理しているそうです。ですから、この「脳が情報を整理する時間」「脳内のあちらこちらの情報を繋げる時間」を作らない=常に一生懸命、何かに向き合っていたり、意識的に考えていたりしているということは、ひらめきや着想を得る機会を逸してしまっている訳です。ちょっと恐くないですか。

アイデアを詰めたい、それまで作業したことを集約し自分の考えをまとめたい、何かひらめきを得たいというようなときは、積極的に、戦略的に、堂々とぼーっとしましょう!

◆ベストな決断をしたいなら…考えすぎず即断せよ?

さあ、「戦略的ぼーっと」のお陰で(笑)、あなたはなかなか良いアイデアを色々と得ることができました。
いざ、決断。集めた情報や出したアイデアについて、ベストな意思決定をしたい。さて、どうしましょうか?

ここでも実は、考えすぎは禁物なのです。
オランダ・ラドバウド大学の心理学者、ダイクスターハウス教授らは、中古車を使った実験などから、人はよく考える・充分な時間を与えられるよりも、限られた短い時間で意思決定を迫られたり、少ない情報で意思決定を迫られたときのほうが正しい答えを出す割合が多いことを明らかにしました。

一般的には皆さんも、何かについてベストな選択をしたいというときには、可能な限りたくさんの情報を集めようとすると思います。部下にも「充分な情報を集めよ」と指示を出されているのではないでしょうか。
しかしもしかしたら、この行為や指示が、よくない選択をもたらしているかもしれません。

先の中古車の実験や、同様のパターンを別のもので行った実験で共通して得られた結果は、選択を行うもの・ことに対する大量の関連情報を与え、かたや充分に考える時間を与えたチームと、選択するための時間を限られた少ない時間に制限したチームとでは、正答率が限られた時間のチームの方が充分な時間のチームよりも、どれもおよそ3倍ほど高かったそうです。

情報が多すぎたり、検討できる時間が充分にあったりすると、逆に細かいところが気になったりして迷いが生じ、結果として誤回答に至ってしまったりするのです。意識的に考えるという行為は、無用なバイアス(偏向、先入観)に向かってしまうことが多いようですね。
逆に先の通り、無意識時の脳の作業ではバランスよく様々な場所にある情報を参照し結び付けたりしながらひらめきや結論を導き出したりしてくれます。自分で「どうだろう、あれかな、これかな」と頭に汗をかいて考えるよりも、自分の脳内の小人たちに働いてもらったほうが、良い仕事ができるようです(笑)。

思えば、仕事ができる人は行動が早い。しかも優れた選択をしながら、どんどん動きます。「頭の回転が早い」「センスが良い」「直感に優れている」などと言われる人たちは、無意識を上手に使える人なのではないでしょうか。
 

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深刻に考えすぎたり、真剣に取り組みすぎたりしがちな昨今、今回ご紹介した2つの心理学理論を踏まえて、戦略的にぼーっと・いい加減にやる時間も積極的に持つこと、深刻に考えすぎずに決断し行動するほうが、逆に成果も出しやすく、しかも精神的にも救われる、一挙両得のアプローチの模様。信じるか、信じないかは、あなた次第です(笑)。

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※この記事は、「SankeiBiz『井上和幸 社長を目指す方程式』」の連載から転載したものです。
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プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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