2020/08/03
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経営幹部・エグゼクティブのためのキャリア&転職を考える
第5回
経営者の心を掴む、欲しがられる人材が持つ圧倒的な〇〇とは
- キャリア
- 転職
- 伊藤 博紀 株式会社 経営者JP ディレクター 兼 エンタープライズサービス統括本部 部長
通常の転職活動では、担当のエージェントから、ご自身の経験、スキルに合わせた求人案件が紹介されることが多いのではないでしょうか。
弊社においても、それが一般的です。しかしながら、私は、候補者の方から「圧倒的な〇〇」を感じたときには、すでに各社からお預かりしている“案件ベース”でのマッチングではなく、その候補者の方の“〇〇”に合ったポジションを企業に逆提案する“打診ベース”のマッチングを行うことがあります。では、ここでいう“圧倒的な〇〇“とはどのようなものなのか。これまで私がお会いした方の中でも、特に印象に残っているCさんを事例にご説明いたします。
Cさんと私の出逢い
Cさんと出逢ったのは、私がエグゼクティブサーチコンサルタントに転身して間もない頃でした。当時Cさんは45歳。あるコンサルティング企業で代表取締役を務められ、教育、保健医療、海外支援など幅広い分野で各種プロジェクトを推進されていました。Cさんは私との初回面談の際に、転職活動理由、経歴などの話の後、真剣な眼差しでご自身の想いを語ってくれました。Cさん:「私は、これまでさまざまなプロジェクトを通して、世界各国の情勢を見る中で、今後の日本に大きな可能性を感じています。そこで今後は、成長の足かせになりかねない日本の人材不足を解消したいと考えています。」
伊藤:「とても素敵なビジョンですね。具体的には、どのように日本の人材不足を解消したいとイメージされているのでしょうか?」
Cさん:「具体的には、私自身が培ってきたリレーションを活用して、日本で働きたい外国籍の労働者と人材不足で悩んでいる日本企業の架け橋を創りたいと考えています。でも、こんな想いを叶えられる案件なんて、ないですよね…?なければ、現職を離れ、自身で起業しようと考えています。」
この瞬間、私はCさんの想いがこもった言葉、真剣な眼差し、ひたむきな姿に「圧倒的な熱量」を感じたのです。と同時に、Cさんの想いを叶えられる企業はどのような企業なのか、即時に想像を膨らませました。
想像の膨らませ方はその時々で異なりますが、Cさんの場合は、事業内容、企業文化、発展ステージなどの基本的な事項との親和性に加え、新事業の展望、その背景にある経営者のビジョン、さらには経営者との相性などを複合的に掛け合わせ、次のようなご提案をしました。
Cさんへの私のご提案
伊藤:「率直にCさんの想いを教えていただき、ありがとうございます。ただ、Cさんのお察しの通り、そのような案件は現時点でお預かりしておりません。とはいえ、私はCさんの熱い想いにとても心を打たれました。そこで、1つ、ご提案があります。」「弊社はY社と長期間にわたるお付き合いがあります。Y社であれば、Cさんの想いを叶えられる可能性があるのではないかと考えています。その理由は、Y社は日本発の人材領域のグローバル企業であり、自己変革をし続けてきた歴史と文化をお持ちです。さらには、新規事業を仕掛けられるリソースをふんだんにお持ちの企業でもあります。もしご関心をお持ちいただけるようであれば、一度Y社に打診ベースでの可能性を探ってみることが可能ですが、いかがでしょうか。」
Cさん:「えっ…?Y社に打診ベースでの可能性を探ることが可能なんですか」 ・・・・ 「ぜひお願いします!」
伊藤:「はい!これは、通常の案件ベースではなく、あくまでも私の想像力にもとづく打診ベースのお引き合わせなので、うまく進まない可能性はありますが、まずは先方にご推薦を申し上げますね。」
CさんとY社 代表取締役社長CEO・Xさんとの出逢い
数日後、Y社から「まずはCHRO(人事最高責任者)とお会いいただきたい」との連絡が来て、Y社との初回面談が終了しました。初回面談終了後、Y社からは「Cさんの人物は高く評価する」ものの、「人材ビジネスについての経験が薄い」そして「外国人受入ビジネスに関しては法整備が流動的で、しばらく手探りになる可能性が高い」といった懸念含みのフィードバックをいただきました。しかしながら、Cさんの想いが面談後も変わらずに強いことが確認できたため、私はY社に、代表取締役社長CEOであるXさんに直接会って、話しをする機会を作ってほしいと強く提案しました。
そして数週間後、Cさんは代表取締役社長CEO・Xさんと直接会って面談をすることになったのです。
終了後……思いもよらぬ連絡がY社から来ました。
「本日面談頂いたCさんですが、まさにX(代表取締役社長CEO)が構想していた新規事業そのものであり、ぜひ一緒に当社グループの未来を創っていただきたい、とXが申しております。」
この瞬間、私は嬉しさの余り、全身が身震いしたことを今でも覚えています。その後、無事にY社からのオファーを受領し、Cさんご自身も現職のステークホルダー等への説明に奔走されました。最終的にCさんがY社に参画できたのは、初めてお会いした日から、約1年後のことでした。
Cさんはその後も「圧倒的な熱量」で新規事業を企画・推進し、半年後には関連子会社を設立し、現在は同社の代表取締役社長として、Y社グループそして日本の未来を創っておられます。
今回は、Cさんの事例をご紹介しましたが、私は、「圧倒的な熱量」をお持ちの方と出逢う度に、「社会に変革をもたらすリーダーをプロデュースする」という自分のミッションが共鳴し、心が躍ります。もし本記事を読まれた方で、「圧倒的な熱量」をお持ちの方がおられましたら、ぜひ私にお声がけください。一緒に将来のキャリアプランを描かせていただければ幸いです。