2020/06/22
1/1ページ
経営幹部・エグゼクティブのためのキャリア&転職を考える
第4回
「未知なる環境」は、なぜ人を成長させるか・・・異物のなかでの個人
- キャリア
- 転職
経営者・経営幹部として活躍している人の多くは、20代後半や30代のうちに、未知の環境に身を置き成果を出した経験があります。
また経営幹部レベルの転職市場では、あえて異なる文化や新しい職場に身を投じ、成果を出した人を優先する傾向があります。
では、なぜ未知なる環境に身を置くことが、経営幹部への道を開くのでしょうか。
転職に限らず、異動や昇進、社外活動など、新たな環境に遭遇すると人は以下のような経験をすることになります。 1)終焉と整理(次の場に移行する準備段階)
未知なる環境に入ることは、それまでの環境・ステージでの自分を終焉させることでもあります。ご自身の中で区切りを作り、これまでの専門スキルやマネジメントのスタイル、自己の強み・弱み、今までの環境で得られたこと・得られなかったことなどを意識的に振り返ることができる時期でもあります。この段階で行う振り返りが、自己認識や環境把握につながり、成長のための指針を作るのです。
2)学習棄却と挑戦(混乱や苦悩の段階)
新たな環境に移ると、程度の差はあれ、誰でもかならず混乱します。これまでとは異なる思考様式や価値観、さらには直面する課題の質も異なり、関わる相手もよくわかりません。アウェイな環境の中で、どう自分の価値を発揮すればよいのか、どうチームに関わって貢献すればよいのか、等 いろいろな悩みにさいなまれることでしょう。
この過程は決して楽しいものではありません。新しい環境にあわせて学習棄却をし、行動変容をする必要に迫られます。しかし、状況に合わせてがむしゃらに取り組んでいるうちに、気がついたら、行動や思考の幅が広がっていることを実感するのです。実はこういった行動や思考の連続的な広がりこそ、経営幹部にとってもっとも必要な要素の一つなのです。
3)得意技の習得と型の意識(新たな成功体験の段階)
新たな環境で必死に試行錯誤していると、先の光が見えそうな瞬間が出現します。ここから成功を手繰り寄せることができれば、これまでとは異なる成功体験となり自信につながります。一方で、環境や状況が異なっても、常に存在する自分なりの得意な思考方法やスキルがあることにも気づくはずです。つまり、ご自身にとっての新しい得意技の習得とともに、自分ならではの“型”を認識する機会にもなりえるのです。型を持ちながら、常に新しい技術を開発し習得していくことは、経営幹部、さらには経営者の行動の在り方そのものともいえます。
未知なる環境に対峙することは、上記の3つのプロセスを通して自己理解を深め、自己変革を促す大きなチャンスなのです。こういったチャンスから逃げず、自分を信じて挑戦し続ける人こそが、経営幹部への道を歩むべき人だと言いかえることができるかもしれません。
私にとっても、このような前向きな挑戦をされる方をさまざまな形でご支援させていただくことは、コンサルタント冥利につきる最も幸せな機会でもあります。
転職だけではなく、社内公募や異動、社外活動など様々なチャンスがあります。できれば20代、おそくとも30代の間に未知なる環境に対峙する経験を積まれることをお薦めします。