2018/07/02
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スペシャルコラムドラッカー再論
第128回
組織の目的は「凡人をして非凡をなさしめること」である。どうやって?
- エグゼクティブ
- マネジメント
- 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
「組織は天才に頼ることはできない。天才は稀である。当てにはできない。凡人から強みを引き出し、それを他の者の助けとすることができるか否かが、組織の良否を決める。同時に、組織の役割は、人の弱みを無意味にすることである。要するに、組織の良否は、そこに成果中心の精神があるか否かによって決まる。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)
こういうドラッカーの言い方を見ると、人というのは凡人であり、属人的であるから、それに依存することは危険。ということは、仕組みやシステム、今風に言えばAIやRPAなどにシフトすべし、ということかとも思える。
が、ドラッカーは、逆のことを述べている。
「成果中心の精神とは、投入したもの以上のものを生み出すことである。それはエネルギーを創造することである。そのようなことは機械では起こらない。エネルギーは、保存はできても創造はできない。投入した以上のものを得られるのは、精神の世界においてだけである。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)
なんと!ドラッカーから「精神の世界」などという言葉を聞くのは、ちょっと意外な気がする。
ドラッカーは、一貫して「一人ひとりの強みに焦点を合わせること」を説き続けた。不得手なことではなく、得意なことに焦点を合わせよ、と。
ここでドラッカーが言う「精神」、組織の精神とは、仲良しクラブではなく、仕事上の成果に結びつく人間関係のことを指している。
「傑出した者の強みが他の者の脅威となり、その仕事ぶりが他の者の不安となることほど、組織にとって深刻な事態はない。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)
これらの考えから、ドラッカーは「凡人をして非凡をなさしめる」組織は、次のようでなければならないと説く。
1)組織の焦点は成果に合わされなければならない。組織の精神にとって必要なことは、個人としても組織としても、成果の基準を高くもつことである。
2)組織の焦点は、問題ではなく機会に合わされなければならない。
3)配置、昇給、昇進、降級、解雇など人事に関わる意思決定は、組織の信条と価値観に沿って行われなければならない。
4)それら人事に関わる決定は、真摯さこそ唯一絶対の条件であり、すでに身に着けていなければならない資質であることを明らかにするものでなければならない。
なによりも、マネジメント自らが、自らの真摯さを明らかにしていかなければならず、成果をあげることを習慣化しなければならない。
成果とは常に成功することではないとドラッカーは補足する。
「それは打率のことである。そこには、間違いや失敗を許す余地がなければならない。あってならないものは、自己満足と低い基準である。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)