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2017/05/29

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スペシャルコラムドラッカー再論

第75回

ドラッカーが語った、「新しい現実」。

  • エグゼクティブ
  • マネジメント
「仕事と働く人の双方が急激に変化しつつある。いまや、仕事の分析、総合、管理、構造、位置づけ、報酬についてまったく新しいアプローチが必要とされている。費用および問題としての労働力の管理から、人と人との関係におけるリーダーシップへと重点を移すことが必要とされている。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)

いまは2017年——、つまり本書刊行時点で44年前の言だ。
なんと、四半世紀近く前から、いま喧伝されていることと同じことを我々はテーマ・課題としている。技術は非連続的に進化しても、人と組織に関することはなかなか変わらないということか—-–。

ドラッカーは、その生きた時代タイミングもあり、最も早く、我々の経済社会が肉体労働者の時代から知識労働者の時代へと大きく比重を移すこと、その中で起きるであろう変化とその対応について明らかにした社会学者である。

知識労働のマネジメントが肉体労働のマネジメントに比べて、どこが難しいかと言えば、それは「生産性の測定」だ。

肉体労働者は、量をもって生産性を測定できる。また技術伝承の仕方もある程度以上明らかだ。よしんばそれが、先達の名人の技を盗む、というようなものであったとしても。

それに対して知識労働者の生産性は、何で測られるだろうか?

「知識労働のほとんどは、その生産性を測定することはもちろん、定義することさえできない。せいぜい生産性を測定できるのは文書係か販売員である。メーカーの営業マンとなると、もう生産性の概念は曖昧となる。売上げか、利益か。顧客をどれだけつなぎとめたか。新たな顧客をどれだけ獲得したか。(中略)メーカーの営業マンよりもはるかに生産性の測定が難しいのが、設計エンジニア、サービスエンジニア、品質管理担当者、販売予測担当者、さらには教師、研究者、マネジメントの人間である。知識労働者の仕事を通じての自己実現は、さらに明らかにすることが難しい。貢献、成果、価値、自己実現のいずれがいかなる満足をもたらすかは、知識労働者本人だけが知りうることである」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

ドラッカーは更に、肉体労働者、知識労働者だけでなく、事務労働者の重要性の拡大、女性の社会進出、機械化・オートメーション化、平均寿命の伸長を主な構造変化として挙げている。
これらはいま、21世紀に生きる我々もまた、喫緊のテーマとして日々各処で取り上げられ、課題取り組みされているものであることは改めて言うまでもない。

かくして我々は、仕事と人のマネジメントに関して、三つの大きな課題に直面しているのだ、とドラッカーは言う。

(1)第一に、組織社会の到来にかかわる問題
(2)第二に、学齢は上がり給与も上がったが、誇りある労働者階級から二流市民への転落を実感しつつある肉体労働者に心理的、社会的地位の変化に関わる問題
(3)第三に、ポスト資本主義社会における経済的、社会的センターとしての知識労働と知識労働者の台頭にかかわる問題

こうした変化から、ドラッカーは、圧倒的に多くの人たちが「飢え」からは解放されたが、経済的な豊かさにより多くの関心を寄せるようになったと述べる。

「生産性向上の果実を味わった分、圧倒的に多くの人たちが、地上の資源が許す範囲内のものではあっても、さらに多くのもの、今日の生産性を超えるものを欲している。しかも、仕事が経済的な報酬を超えたものさえもたらすことを要求するようになった。生計の資だけでは不十分となった。仕事が人生にならなければならないことになった」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

現代社会の特徴は、豊かさの増大ではなく、「期待の増大」だと。それゆえに仕事を生産的なものにすることが、かつてなかったほどに重要になったと、ドラッカーは喝破している。

欲望の増大とその歪に直面している我々は、このドラッカーの読み解きから、いま~今後、どのような「程度」の生産性と欲望充足を世に提供し、自ら享受

プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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