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2017/05/22

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スペシャルコラムドラッカー再論

第74回

戦略計画とは、何か?

  • マネジメント
前々回、前回と2回に渡って、「戦略計画とはいえないもの」について見てきた。

「ここまでくれば、戦略計画とは何かを明らかにしようとしてもよい。それは、リスクを伴う企業家的な意思決定を体系的に行い、その実行に必要な活動を体系的に組織し、それらの活動の成果を体系的にフィードバックするという連続したプロセスである」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)

“体系的に”ということが肝だ。

「体系的に行わないかぎり、何も達成されはしない。目的意識なくしては、いかなる成果も期待しえない」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

分かっているよ、と言いたくなる。しかし、ここはひとつ、こらえて、ドラッカーの言に耳を傾けてみよう。
ドラッカーは、この「企業家的な意思決定」について、「明日、目標を達成するには、今日、何をしなければならないか」を考えることだと言っている。そして、これを決めるために、まずからなければならないことは、「昨日を廃棄すること」だと言う。

「明日新しいことを行えるようになるための前提は、もはや生産的でないもの、陳腐なもの、陳腐化したものから自由になることである」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

事業活動はどのレベルのことであれ、日々の活動の積み重ねの結果、いつの間にか、ルーティンが増えていき(それは仕組化されたという良い側面が当然ある訳だが)、その中のいくばくかのことは、気が付けば、「いま、それをやっていることには、今後も価値があるのか?」と問われた際に、「?」とか、「いや、、」となるものが紛れ込んでいるものだ。

陳腐化したものを廃棄せずに新しいことに着手しても、いかなる成果も生むことがないとドラッカーは断言する。

そこまで言い切らなくても…とも思うが、しかし確かに、我々は、昨日までの「陳腐化したもの」の山に埋もれて時間やコストを喰われ、明日の新たなことに集中投資できていないことの、なんと多いことか!という実感が皆、あると思う。

「昨日を廃棄」したら、「明日のための、どのような新たなことをやるか。いつやるか」を決める。
それは、「それを、誰がやるか(誰にやらせるか)」によって具体化される。

「最高の戦略計画であっても、仕事に具体化されなければ、よき意図に過ぎない。成果は組織の中の有能な人材を具体的な仕事に割り当てることによって決まる」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

社長の最重要業務のひとつは「リソースアロケーション」だと、私は兼ねてからお話ししているが、まさに、戦略計画は、成果を生むべき活動に資源を割り当てて初めて、意味を持つ。「さもなければ、約束と希望はあっても戦略計画は存在しない」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)。

戦略計画では、成果の尺度設定が重要な意味を持つとドラッカーは言う。仕事は、誰かが行うものだ。だから、「誰が、どのような責任と、締め切りと、成果の尺度を負うのか」を明確にし臨まなければならない。

「リスクを伴う長期的な意思決定を行いたいか、行いたくないかは問題ではない。マネジメントは、その責務からして必ず決定を行う。違いは、責任をもって行うか、無責任に行うかである。成果と成功についての可能性を考えて行うか、でたらめに行うかである」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

戦略計画とは、手法でもなく、予測でもなく、リスクをなくすためのものでもない。
それは、我々経営者が、「いつ、何を、誰に、どのような責任、締め切り、達成基準をもってやるか/やらせるか」なのだ。

プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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