2017/04/24
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スペシャルコラムドラッカー再論
第71回
利益とは何か。
- マネジメント
- 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
昨今は、トップライン(売上目標)はあえて設定せず、ボトム(利益)の目標値だけを追う企業も増えてきたように感じる。
利益は当然、多ければ多いほうがよい。99%の経営者がそう考える。
しかしドラッカーは、利益について少し異なる見方をする。
「利益計画の作成は必要である。しかしそれは、無意味な常套語となっている利潤極大化についての計画ではなく、利益の必要額についての計画でなければならない」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)
前回までに見てきたマーケティング、イノベーション、経営資源、生産性(、プラス社会的責任)に関する各目標を徹底的に検討し、設定して初めて、「どれだけの利益が必要か」との問いに取り組むことができるのだとドラッカーは強調する。
これらの目標は「いずれも達成に大きなリスクを伴う。しかも相応の活動すなわちコストを必要とする」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)、だからそのための原資としての利益を確保する必要性が生じるのだ。
「したがって、利益とは企業存続の条件である。利益とは、未来の費用、事業を続けるための費用である」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)
利益は条件であり、かつまた、制約でもあるとドラッカーは言う。
利益を達成不可能なほどに高く設定してはならない。他の目標に見合ったものであるかを、我々経営者は注意深く確認して設定マネジメントしなければならないのだ。
他の目標を実現するためには、達成が不可能なほどの利益を上げなければならない、などという計画であったならば、その利益目標に「チャレンジ」するのではなく、おおもとの他の目標設定を分相応なものに修正しなければならない。「胃袋の大きさを越えて食べようとしてはならない」(ドラッカー)。
利益に見合う以上のエネルギーを投入し、リスクを負うような経営をしてはいけない。目標間のバランスをマネジメントできているか否か、ここにこそ我々経営者は、その力量を大きく問われることになる。