2017/04/10
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スペシャルコラムドラッカー再論
第69回
経営資源の獲得こそ、経営の最大懸案事項である。
- マネジメント
- 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
手元の経営資源に目がいくか(いかざるを得ないか)否かこそが、その人が経営者であるか否かを区別する、とさえ言える。
「二百年も前から経済学がいってきたように、経済活動には三つの資源が必要である。労働つまり人的資本、資本つまり明日のための資金、土地つまり物的資源である。これら三つの経営資源を確保し、生産的に使わなければならない。したがって、これらのすべてにおいて目標が必要である」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)
三資源それぞれに、どのようなものを必要とするか、それを如何に獲得するか。
ドラッカーは、特に人材と資金の獲得については、マーケティング的な目標をもつことが必要であると説く。
「必要な人材を惹きつけとどまってもらうには、彼らの仕事をどのようなものにする必要があるか。仕事の市場にはどのような人たちがいるか。彼らの関心を惹くにはどうしたらよいかを考えなければならない。同じように、必要な資金を惹きつけとどまってもらうには、融資、社債、株式など、わが社への投資機会をどのようなものにする必要があるかを考えなければならない」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)
これらを考えるということは、とりもなおさず、事業そのもののあり方、ミッションやビジョン、戦略や組織を練り込むということに他ならない。
自社の事業活動のために必要な人材と資本と物的資源を調達するのだが、どのような人材と資本と物的資源を獲得できるかによって事業活動が規定されるともいえる。ここが難しい。
「これら経営資源に関わる目標は、二つの方向において設定しなければならない。一方のスター地点は、経営資源に対する需要である。自らの需要を市場の状況との関連において検討しなければならない。もう一方のスタート地点は、それらの市場である。それらの市場の状況を、自らの事業の構造、方向、計画との関連において見なければならない」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)
私は、トップの仕事の中でももっともセンスを問われるのが「リソース・アロケーション」だと思っている。
限られた三資源を、どうやり繰り、最適化するか。常にタフな仕事となるが、これを練っているときが最も楽しいし、それがピタッと嵌まったときこそ得も言われぬ達成感を得られる。
経営の醍醐味は、ここにこそあるのではないだろうか。