2017/04/03
1/1ページ
スペシャルコラムドラッカー再論
第68回
イノベーションの目標。
- マネジメント
- 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
「イノベーションの目標とは、「われわれの事業は何であるべきか」との問いに対する答えを、具体的な行動に移すためのものである」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)
われわれの事業はいま何なのか、に対して顧客に向き合うと同時に、われわれの事業はこれからいかにあるべきか、あるいはそもそも何であるべきなのかを問うことで、我々は未来へと事業を推し進めることができる。
ドラッカーは、いかなる企業においても、イノベーションは三種類あるという。製品・サービスにおけるイノベーション、市場におけるイノベーション、流通チャネルにおけるイノベーションだ。
「イノベーションの目標を設定するうえでの最大の問題は、イノベーションの影響度と重要度の測定の難しさにある。確かに技術的に最先端にあることは望ましい。しかし、包装に関する即利用可能な小さな改良100件と、あと10年の努力によって業容を一変させるに違いない化学上の大発見1件の、いずれが重要か。この問いに対する答えは、デパートと製薬会社では異なるし、製薬会社でも会社によって異なる」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)
そのため、イノベーションの目標は、マーケティングの目標ほどには明確にはならないと、ドラッカーも認めている。さて、どうするか?
大企業に比べて小企業がイノベーションについてアドバンテージがあることを、ここでドラッカーは述べる。
「ある社長は、「規模が小さいうちは、その分市場近いために、どのような製品が求められているかを知りやすい。技術部の連中も、自分たちがあまりに小さすぎて、引きこもっているわけにはいかないことを知っている。否応なしに、外の世界に目と耳を向けている」といっている」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)
正直、ドラッカーにしては、この部分は歯切れが悪く感じるが、一つの光明として、ベンチャーや小企業が、大手に比べて顧客や市場の嗅覚に長けているという部分を、衒いなく自らの強みとして「われわれの事業は何であるべきか」との問いに対する答えを、具体的な行動にすみやかに落とし込むというのは、即着手して損はないことだろう。