2017/03/13

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スペシャルコラムドラッカー再論

第65回

体系的廃棄。

  • マーケティング
  • マネジメント
ここまで数回に渡り、事業の目的とミッションについて見てきた。

ドラッカーの説くところをあえてかいつまんで言えば、「われわれの事業は、いま何なのか」「今後、何になるのか(なることが望ましいのか)」を常に確認し続けよ、ということになる。
その問いはすべて、顧客から始まる。「われわれの顧客は、何を求めているのか」。

その観点でドラッカーは、最後に、消費者の欲求のうち、「今日の財やサービスで満たされていない欲求は何か」を問う必要がある、と言う。

「この問いを発し、かつ正しく答える能力をもつことが、波に乗るだけの企業と成長する企業との差になる。波に乗っているだけの企業は、波とともに衰退する」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)

顕在的なニーズに対応することは大事だが(「登りエレベーターに乗る」)、その“波乗りだけ”であれば、波の引き際とともに自社の事業も泡となって消えていく。確かにこうした企業や事業は昔から今に至るまで、本当に多く目にする。

「われわれの事業は何になるか」の問いで予測される変化に適応しつつ現在の事業を修正、拡張、発展させ、「われわれの事業は何であるべきか」を問うことで新たな機会を開拓し、新しい事業を創造する必要がある。

これを行うために、実は最も重要なことが、「体系的廃棄」であると、ドラッカーは説く。

「新事業への参入の開始と同じように重要なこととして、事業の目的とミッションに合わなくなったもの、顧客に満足を与えなくなったもの、業績に貢献しなくなったものの体系的な破棄がある」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

既存の製品、サービス、プロセス、市場、最終用途、流通チャネルetc.といったものを分析し、「それらのものは今日も有効か、明日も有効か」「今日顧客に価値を与えているか」、明日も顧客に価値を与えるか」「今日の人口、市場、技術、経済の実態に合っているか」—-–。
そして、

「合っていないならば、いかにして廃棄するか。あるいは少なくとも、それらに資源や努力を投ずることをいかにして中止するか—-–これらの問いを体系的かつ真剣に問わないかぎり、またこれらの問いに対する答えに従って行動しないかぎり、「われわれの事業は何か。何になるか。何であるべきか」との問いに対して最善の定義を下したとしても、単に立派な手続きを経たというにすぎない」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

ことほど左様に、事業を定義するということは一筋縄ではいかない作業だ。
本質を問い、見えない未来を予測し、既に抱えている成功をときと場合によっては未然に廃棄する必要がある。
経営者にとって苦痛は大きく、リスクも大きい。

「しかし、事業の定義があって初めて、目標を設定し、戦略を発展させ、資源を集中し、活動を開始することができる。業績をあげるべくマネジメントすることができる」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

逃げてはいけない。

※経営者は孤独だ。独りでこれらの作業を行うことには自問自答の迷いも多く、正しい道に進んでいるのかの道しるべも欲しくなる。
ガイドラインやナビゲーター、また、ともに行う仲間達が欲しい、という経営者諸氏には、ぜひ、以下のプログラムを活用頂きたい。
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プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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