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2016/03/22

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スペシャルコラムドラッカー再論

第18回

コスト管理の5つの原則

  • マネジメント
前回、コストとは本来、どうあるべきかについて見た。

「問題はコストの絶対額ではない。業績対比である。いかにコストが安く効率的であっても、業績をあげないならばコストでさえない。浪費にすぎない。そしていつになっても業績をあげないならば、それは初めから正当化されざる浪費だったにすぎない」(『創造する経営者』1964年)

ドラッカーは、コスト管理の効果的な方法には5つの原則があると言う。

「第一に、コスト管理は、最大のコストに集中しなければならない。5万ドルのコストの1割削減に要する労力は、500万ドルにコストの1割削減に要する労力とほとんど同じである。換言するならば、コストもまた社会的な現象であって、その90%は10%の活動から発生する」

「第二に、コストはその種類によって管理しなければならない。製品と同じように、コストも多様である」

「第三に、コスト削減の最も効果的な方法は、活動そのものをやめることである。コストの一部削減が効果的であることは稀である。そもそも行うべきでない活動のコスト削減は、意味がない」

「第四に、企業の現実を理解するには、成果をもたらす領域すべてを視野に入れなければならないのと同じように、コスト管理の成果をあげるには、事業の全体を視野に入れなければならない。さもなければコストの他への押し付けに終わる。コスト削減の大成功の数ヵ月後には、事業全体のコストはさして変わっていないことが明らかとなる」

「第五に、コストとは経済の概念である。分析の対象たるコスト構造は、経済的価値を生むための全経済活動である。コストとは、製品やサービスを購入しその効用を得るために、最終消費者が支払うものである。しかしコストは、ほとんどの場合、経済的ではなく、法的に、すなわち個別企業という特定の法的存在の内部において発生するものとしてのみ定義されている。その結果コストの大半が見えなくなっている」

(以上、『創造する経営者』1964年)

引用がながくなったが、簡単にそれぞれについて見てみよう。

第一に、コスト管理は「大きな筋肉」からアプローチせよ、ということだ。掛かる手間暇は同じなのだから、インパクトが大きく出るところにメスをいれよ、と。コスト削減というと、よく、「文具を節約しろ」とか「電源を元から切れ(コンセントを抜け)」とかやる会社が多いが、文具節約で節減できるものなどたかがしれている。コンセントを元から抜いてしまうと、再度、大元の原電を入れ直すときにこそ最も電気容量を使うという笑い話にならない事実もある。

関連して、第三に、「やるなら徹底的にやれ」ということ。「削減する」のではなく、「やめてしまう」くらいのことでないと効果がないのだ。

第四と第五は、「部分でコスト削減をやると、結局、他への付け替えをしているに過ぎず、全体で見てコスト削減になっていないことが多い」ということだ。

まあ、コストを下請けや流通に押し付けて、自社の負担を減らすのも、コスト削減といえばいえなくはないだろうが、社会性のない行為だろう。自社内で部門間でそんなことをやっているのならば、まったく意味がないし、第五では、ドラッカーは、経済活動全体で見てのものでなければ意味がないと説いている。ここにドラッカーの視座の高さを見ることができるだろう。自分だけもうければいいという話ではないのだ。

「コスト分析は、企業を外部から見るマーケティング分析によるチェックがなければ、信頼できる意味あるものとはならない、コスト分析だけでは部分的な分析でしかない」(『創造する経営者』)のだ。

プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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