2023/06/15
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ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術
第157回
劇的に生産性が上がる「15分単位の予定表」
- キャリア
- ビジネススキル
- 菅原 洋平氏 作業療法士 ユークロニア株式会社代表 アクティブスリープ指導士養成講座主宰
作業の順番を決めてワーキングメモリの記憶容量をセーブすれば、自然と「必要なタイミングで必要なことを思い出す」能力が戻ってきます。
なぜなら、ど忘れは本当に忘れてしまったのではなく、別のこと(作業)に注意が奪われて、そのことに記憶容量を使われていることが原因だからです。
なぜ「15分」なのか?
心がフラフラとさまよって、別のことを考え始めてしまっている状態を「マインドワンダリング」といいます。「1つのことをしているときに、別の作業を思い付く」かつ「その瞬間に、前にしていたことは頭から消えてしまう」のが特徴です。マインドワンダリングは、意図せずに私たちの脳の容量を使います。勝手に思い浮かんでしまったことに容量をとられることで、ワーキングメモリの使える容量が減ってしまうわけです。
このマインドワンダリングの出現頻度を調査した研究では、16分に1回の頻度で出現していることが明らかになっています。
つまり、16分に1回は「心ここにあらず」の状態で行動してしまう、ということ。しかも残念なことに、これは脳がもつ特性のため、努力で防ぐのは困難です。「作業時間を“15分以内”で区切ることが重要」なのは16分ごとに別の作業について考えてしまうから。
そこで、「はかどっていてもそうでなくても、15分で終わり。そこからまた別の作業をする」というルールを決めれば、作業の集中を妨げるマインドワンダリングは防ぐことができます。
「自分区切り」で脳のふらつき・マインドワンダリングを防ぐ
しかし……この話をすると、大抵このように反論されてしまいます。「どこまでやったかを忘れちゃうから、途中でなんてやめられない!」でも、本当に、どこまでやったのかを忘れてしまうのでしょうか? 例えば、仕事中にメールがきます。そのメールを読んで返信をした後、元の作業に戻ると、「あれ? どこまでやったんだっけ……」とやったところを探すのに時間がかかってしまいます。
それに対して、「自分で作業を区切った場合」は、元の作業について忘れにくいはずです。
試しに、次の2つを、5分ごとに繰り返してみてください。
・文章を書く( スマホやパソコンでもOK)
・読書( スマホやパソコンでもOK)
文章を書いている途中で5分になったら、 そこで終わりにして、読書を始めましょう。また5分たったら、元の作業に戻ってください。
いかがでしたか? 意外とすんなり元の作業を再開できたのではないでしょうか。
なぜこのようなことが起きるかというと、「脳の疲労」が関係しています。
しばらく作業を続けていると脳が疲労し、思考がフラフラとさまよい始めて、関係ないことを考えてしまいます(=マインドワンダリング)。これを防ぐために、「ノルアドレナリン」という物質が上昇して集中を保とうとします。このときに邪魔が入ると(声をかけられたりするなど)、ストレスによって「コルチゾール」というホルモンが急上昇します。
このコルチゾールがくせもので、記憶をつかさどる「海馬」の活動を弱め、記憶力を低下させてしまいます。そのため、作業に戻ったときに「あれ? どこまでやったんだっけ?」となるのです。
一方、自ら意識的に15分以内に区切る場合は、そもそもノルアドレナリンが上昇する前に作業をいったん終えることができるため、コルチゾールは上昇しません。記憶力も低下しないので、すんなり作業を再開できる、というわけです。
ぜひ、マインドワンダリングを防ぐためにも、「15分サーキット」を活用してみてください。
私はいま、作業療法士として、企業で働く人たちの行動変容を促すことに取り組んでいます。自らの脳の仕組みを知って使い方を変えることは、新たな感覚を得る体験です。その感覚こそが、その人の要領のよさの材料です。本書『要領がいい人になるための40のコツ』が、その一助になれば幸いです。 他の記事も読む。60秒で簡単無料登録!レギュラーメンバー登録はこちら >
■書籍情報
「仕事が終わらない人生」が180度変わる 努力に頼らず「要領がいい人」になる40のコツ 単行本(ソフトカバー)
著者: 菅原洋平
出版社:アスコム
価格:1,595円 ※この記事は、アイティメディア株式会社の許諾を得て
「ITmediaエグゼクティブ『ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術』」
の連載から転載したものです。無断転載を禁じます。
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