TOP ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術 人的資本経営で求められる「部下全員が活躍できる職場」をつくるには

2023/06/08

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ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術

第156回

人的資本経営で求められる「部下全員が活躍できる職場」をつくるには

  • キャリア
  • ビジネススキル
  • 前川 孝雄氏 株式会社 FeelWorks社長・株式会社働きがい創造研究所会長・青山学院大学兼任講師
 

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上司は、自分が動くことが仕事ではなく、人を動かし組織を動かすこと。すなわち上司の働きかけでチームメンバー全員が一丸となり連携し、メンバー個々の力だけでは成し得ない大きな成果を生み出すこと。

上司の仕事は一人ではできない組織成果を出すこと

上司の仕事とは、いったい何でしょうか。   私は、企業の人材育成において、日々部下のマネジメントにあたる上司の役割が要だと考えています。   私が営むFeelWorksでは、創業から15年以上「上司力」にこだわり続けてきました。「上司力」をいかに現場で効果的に発揮し、磨いていくかを追究し、講演・研修やコンサルティングを通して、400社以上の上司の皆さんを支援してきました。その集大成が、拙著『部下全員が活躍する上司力5つのステップ 管理職から支援職に変われば、奇跡が起きる!』(FeelWorks、2023年3月発行)」で紹介する部下全員が活躍する支援型マネジメント「5つのステップ」です。

上司は、自分が動くことが仕事ではありません。人を動かし組織を動かすこと、すなわち上司の働きかけでチームメンバー全員が一丸となり連携し、メンバー個々の力だけでは成し得ない大きな成果を生み出すこと。これが上司の仕事の神髄です。

上司には、部下全員を育て活躍支援する責任がある

上司には、自分がマネジメントするチームの部下全員を育て活かす責任があるのです。
 
ただ組織で働く以上、現場の上司は自分の部下となるメンバーを自由に選べるわけではありません。私たちが開講する「上司力(R)研修」でも、「部下の行動や考えを理解できず、うまくコミュニケーションが取れない」「部下を信頼して任せきれない」、さらには「どうしても部下を好きになれず悩む」など、痛切な声を聞くことが少なくありません。
 
上司も一人の人間ですから、そうした感情にとらわれることも無理はないでしょう。しかし、上司という職責を担う限り、預かった部下に関わることから逃れることはできません。メンバー全員に関心を持ち、しっかりと向き合い、活かすための努力と工夫が不可欠だと心得ることが第一歩です。

人を活かすことは、雇用を守ることではなくプロに育てること

では、部下全員を育て活かすとは、果たしてどのようなことでしょうか。
 
これまでの日本企業では、社員を大切にすることは雇用を守ることだと考えられてきました。しかし、これだけ変化が激しい現代において、それは本当に正しいのでしょうか。
 
子育てにおいては、「かわいい子には旅をさせよ」と言います。自分の子どもがかわいいからといって、家の中に囲い込み、世間のリスクに一切触れさせずに育てれば、どうなるでしょう。親は子どもより先に亡くなりますから、子どもはいずれ独り立ちしなければいけません。子どものためを考えれば、親の擁護がなくても社会で生きていけるように、一人前に育て上げることが大切です。
 
同様に、今や多くの企業にとって、社員全員を終身雇用で一生守り続けることは困難です。会社の方向性と個人のキャリア志向がずれてくることもあるでしょう。上司も、いつまでも今の部下の上司ではいられません。人生100年時代であり、かつVUCAといわれる時代。部下たちも社内での組織再編や他部署への異動や転勤を経験し、また雇用の流動化が進む中、転職の可能性もあるでしょう。
 
従って、部下を真に大切にするとは、現在の職場や上司の下に囲い込むことではありません。いつでもどこでも、社内外で活躍し続けられる自律したプロとして育て上げることなのです。たとえ数年間であっても、部下が「この上司の下で働いた経験は、自分のキャリア形成にとって貴重だった」「自律に向けて成長させてもらえた」と思えるように、支援することです。

プロフィール

  • 前川 孝雄氏

    前川 孝雄氏

    株式会社 FeelWorks社長・株式会社働きがい創造研究所会長・青山学院大学兼任講師

    「コミュニケーションが人と組織を変える」をスローガンにする人材育成の専門家集団(株)FeelWorksグループ創業者。兵庫県生まれ。大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒業。リクルートを経て、2008年に「人を大切に育て活かす社会づくりへの貢献」を志に起業。独自開発した「上司力研修」「上司力鍛錬ゼミ」や「人を活かす経営者ゼミ」、「育成風土を創る社内報」などを手掛け、300社超で「人が育つ現場」づくりを支援している。ミニドラマを用いた「働く人のルール講座」、「キャリアコンパス研修」、「女性幹部リーダー養成研修」など、時代性を踏まえた先進的な研修プログラムも提供している。2017年に中小企業支援の(株)働きがい創造研究所を設立。『上司の9割は部下の成長に無関心』『「働きがいあふれる」チームのつくり方』などベストセラー著書多数。

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