TOP 社長を目指す方程式 「部下のモチベが低い…」そんな上司ができる“やる気”向上のアプローチ

2022/03/15

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社長を目指す方程式

第86回

「部下のモチベが低い…」そんな上司ができる“やる気”向上のアプローチ

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今回の社長を目指す法則・方程式:

ジョン・マイヤー&ナタリー・アレン「組織コミットメントの3分類」

ジョン・カッツェンバック「燃える集団に到達する5つの道」

 
新年度も間近になり、上司の皆さんは次年度のチームの目標達成のためにメンバーたちのやる気や達成意欲をどう高めていこうかと、あれやこれやお考えではないでしょうか。

 

やる気には「モチベーション」と「コミットメント」の2つがあります。モチベーションとは「やりたい!」、コミットメントとは「やります!」という気持ちのことです。もちろんメンバーたちのモチベーションは高いことが望ましいですが、こと、目標達成に関して言えば、上司としては部下たちのコミットメントの方も高めたいと思ってしまうものですよね。
そこで今回は、部下たちを「やります!」という気持ちにさせるために、私たち上司ができるアプローチをお伝えしたいと思います。部下の“やる気”問題に直面している上司のみなさんも、ぜひ参考にしていただければと思います。

 

3つのアプローチで部下の主体性を刺激

まず大前提としてお伝えしたいのは、部下たちの「やりたい!」という気持ちと「やります!」という気持ちは別物だということです。読者の方の中には、今までこの2つを一緒と捉えていた方もいるかもしれませんが、「やります」と言っていても「やりたい」とは思っていなかったり(目標設定会議や営業会議での場面が脳裏によぎったかたも多いのでは?)、「やりたい」と思っていても何を「やります」なのかが曖昧なままだということも少なくありませんね。

 

「やります!」という言葉からも分かる通り、コミットメントとは「主体的関わり」を意味します。では、そもそも人の「主体的な関わり」は、どのような気持ちから生まれるのでしょうか?
これに関して、なるほどと思う心理学理論があります。組織心理学者のジョン・マイヤーとナタリー・アレンによる、組織コミットメントの3分類です。彼らによれば、コミットメントには次の3種類があるといいます。

 

「情緒的コミットメント」:組織に対する愛着や一体感があるのでコミットする=「情」
「継続的コミットメント」:組織を辞めてしまうと損するのでコミットする=「利」
「規範的コミットメント」:組織にはそもそもコミットすべきなのでコミットする=「義」

 

いかがでしょう? これは、結婚でたとえてみると面白いです。それぞれ、「好きだから一緒にいる(情)」「便利だし、今さら他の人を探すのも面倒(利)」「添い遂げるのが夫婦というものだ(義)」。皆さんはどうですか?(笑)

 

仕事で言えば、会社がそこそこ好き(情)で、仕事には責任を持つべきだと思っている(義)が、実際のところ「いま転職しても得策ではない」という計算もある(利)などというのが、多くの人たちが持つ感情ではないかと思います。

 

上司としては、組織へ関わる動機を持つメンバーたちに対して、誰がどのタイプかを見分けることも大事な仕事です。できれば、「我々はこれを成し遂げるのだ」という錦の御旗(義)を立て、部下たちの「この上司のために、このチームで達成したい」という気持ち(情)に訴え、達成した暁には〇〇が手に入るぞ(利)などと働きかけてチームを動かせる。そんな「コミットメント・プロデューサー」でありたいですね!

 

チームを「熱く燃える集団」にすれば、チームのコミットメントは最高潮に達する

ちょっと冷静なコミットメント強化策を見ましたが、もうひとつ。情熱に溢れる上司の皆さんには、こちらのほうがお好みかもしれない理論をご紹介しましょう。

 

冒頭、モチベーションとコミットメントについて触れましたが、これが渾然一体となっている状態というのももちろんあります。もしかしたらその状態のほうが、ご経験がおありかもしれません。
それはいわゆる<フロー状態>にあるようなときです。フロー状態とは、時間を忘れて没入している、高揚感ある時間を指しますが(「ゾーンに入る」とも言いますね)、そのようなときに個々人やチームのコミットメントは最高潮に達しています。
元ソニー上席常務で犬型ロボット「AIBO」の開発を主導した天外伺朗(てんげ・しろう)さん(本名:土井利忠さん)は、この状態のチームを「燃える集団」と命名して、その再現を研究・実践支援されています。

 

組織パフォーマンスの研究家、ジョン・カッツェンバックによれば、「燃える集団(フロー状態)」に到達するには5つの道があると言います。

 

【“ゾーンに入る“ための5つの道】
1. ミッションや価値観に強く共感し誇りを持つこと
2. キーとなる業績数値を綿密に「見える化」すること
3. メンバーが独立心のあるアントレプレナーシップを持つこと
4. 「世界レベルの人材」を惹きつけること
5. メンバーを認知し徹底的に称賛すること

 

どのパスからでも「燃える集団」になり得るとカッツェンバックは言いますが、私自身の経験的には、どれかひとつだけというよりも、幾つかの要素(3つか4つ)が重なった時に、あるとき気がつくとフロー状態に入っているように思います。

 

いずれにしても、上司がチームのコミットメントを高めていく鍵は、部下たちの燃える思いを引き出して本気にさせることに尽きるでしょう。

 

*         *         *


 

コミットメントには互酬的な性質があります。他のメンバーが本気で仕事にコミットしていると、「自分もやってやろうじゃないか」と別のメンバーたちへ相乗効果的にコミットメントが高まる連鎖が起きます。
上司の役目は、先頭に立って「本気の、燃える気持ちの好循環」のサイクルを発生させて、それをガンガン回していくことですね!  

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プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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