TOP 社長を目指す方程式 逆説的に部下をやる気にさせてしまう“ヤバい”行動経済学

2019/09/17

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社長を目指す方程式

第22回

逆説的に部下をやる気にさせてしまう“ヤバい”行動経済学

  • キャリア
  • ビジネススキル
  • マネジメント

◆「サンクコスト効果」「保有効果」で惰性や慣れに刺激を与え、最後までこだわらせる

人は、ある程度まで進めたことを途中で捨てることに心理的な抵抗を持ちます。私は漫画も良く読むのですが(現在、30タイトルほど単行本で追っています)、その中の何タイトルかは途中で話がつまらなくなってしまっているにも関わらず、「でも25巻まで読んでるしなぁ」とそのままその後の続刊を発売されては買い続け、義務のように読んでいるものがあります…。

プロジェクトワークなどが長期化してくると、悪意なくだれてきたり飽きてきたりするものです。そんな折に、上司の隠し玉として使える心理テクニックをご紹介します。

ちょっと意地悪い策略ではありますが、部下のプロジェクトワークがある程度以上進んだところで、上司のあなたは「このまま予定通りのプランで進めていくのはどうかなと思うんだ。これはやめて別のやり方をするか?」。実はそのまま完成させることでOKなのですが、部下には逆のことを敢えて言って、業務を止める<妨害>に入ってみせます。

すると部下は内心、「えー、せっかくここまでやって、終わりも見えてきているのに!」。もしかしたら惰性に入っていた業務に、メラメラと火がつきます。

これは、せっかく途中まで作ったものは捨てたくない「サンクコスト効果」の現れです、しめしめ(笑)。部下にその気持ちを読み取ったら、のらりくらりと会話しながら、「そうか、分かった。キミがそこまで言うなら、このまま続けて完成させてくれ。その代わり、最高のものに仕上げてくれよ」とポンと肩を叩いて颯爽と部下のデスクから去りましょう。

更に性格悪いアプローチです。同じく、彼(彼女)が最終仕上げにかかって、いよいよ来週、事業本部の会議でプレゼンを行うというときに、「ここまでお疲れさん!最終プレゼンは先輩のAに任せるか?」。最後の最後で手柄を別のメンバーに渡すよう、取り上げてしまう(ふりをする)。

「それはないですよ!」、はっきり言う部下もいるでしょうが、言えない部下もいらっしゃるでしょう。どちらであっても、ここまで頑張ってきた部下であれば、内心のスイッチがカチッと入ったはずです。ここまでやってきたのだから、自分がプレゼンしたい!

ここでは「現状維持バイアス」「保有効果」のスイッチが入っています。このまま自分で、という意識をグッと強め、自分で最後までやり遂げたい気持ちを高めることで、来週の事業本部会でのプレゼンに気持ちを入れてもらいましょう。上司のあなたの目的は、要するに部下に最高の状態でプロジェクトを完遂し納品してもらうことなのですから、そのためであれば、部下への多少の心理学的意地悪も許されることと思います。


*      *      *

 
人間心理の逆をついて、部下のやる気にスイッチを入れる方法をご紹介しました。

しかしこれらの心理学的アプローチは、大前提として、そもそも本人が担当業務をちゃんとやれる能力と業務を真面目にやる姿勢という土台がなければ、これらの仕掛けは全く効き目がありません。念のためご注意、ご確認ください!

※この記事は、「SankeiBiz『井上和幸 社長を目指す方程式』」の連載から転載したものです。
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プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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