TOP 社長を目指す方程式 逆説的に部下をやる気にさせてしまう“ヤバい”行動経済学

2019/09/17

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社長を目指す方程式

第22回

逆説的に部下をやる気にさせてしまう“ヤバい”行動経済学

  • キャリア
  • ビジネススキル
  • マネジメント

◆「ツァイガルニク効果」で、もっと仕事をさせてください!と思わせる

働き方改革で残業規制もこれまで以上に重要となっています。皆さんの職場でも、上司のあなたへの部下の残業管理司令は厳格なものになっているのではないでしょうか。大手企業にお勤めの読者の皆さんは部下の残業時間の多さが上司であるあなたのマイナス考課に直接反映されるように人事評価が改編されたりしている方もいらっしゃると思います。

仕事量は増え続けていて、業務時間は減らせって、会社も無茶ばかり言うよなぁ…。そうぼやいている方も多いでしょう。

ここはひとつ、これを逆手に取るメンバーマネジメント法を手にしておきませんか?

あなたのチームで、一定以上仕事に乗っている部下に対して非常に効果的な心理学アプローチがあります。

それは、まさにいま乗っている部下に対して、「おい、もうそこまででやめて、今日は帰れ」と、あえて上司のあなたのほうから先に、仕事を中断させるのです。「えー、いまいいところなので、もう一踏ん張りやってから帰ります」と部下。「ダメダメ、今月の残業時間、月初でなくなってしまうのは課としてまずいんだ。さあ、終わり終わり!帰った、帰った」。不承不承、部下はデスクを片付けオフィスを出るでしょう。

これは、自分がやりたいことを中断されると、より意欲が高まる「ツァイガルニク効果」を狙ったものです。

心理学者ツァイガルニクの行った実験によれば、作業タスクを途中で中断させることで、作業を継続したチームに比べて中断させられたチームは2倍、その作業について後々鮮明に記憶していたそうです。更にこれを発展させたいくつかの実験では、同様の作業中断で、興味関心が高まることが分かったと。

私たちは日常、このツァイガルニク効果に“ヤラれて”います。それは、「続きはCMのあとで」「詳しくはWEBで」。「おいおい、続き見せてくれよ!」、と時にムッとしながらも、続きが気になってCM明けまでテレビに釘付けにされたり、スマホでサイト検索に行ったりしてしまいますよね。

ノッている仕事を強制終了させられたことで、部下はその仕事への注視度合いとコミットメントを高めます。帰宅後、翌日朝まで「続きはこうやってやろう」「関係する情報、ネットや本で調べておこう」という思考・行動が発生し、翌日出社後、猛然と昨日の続きに取りかかってくれることでしょう。

プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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