2019/02/05
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社長を目指す方程式
第6回
キャリアアップも部下育成も、研修を凌ぐ最強の方法とは?!
- キャリア
- ビジネススキル
- マネジメント
- 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
◆「リクルート流」の人材育成の真意とは
私がリクルート出身、しかも人事部門にいたことがあるということで、昔から今に至るまで「リクルートの人材育成方法、教育プログラムを教えて欲しい」と言われ続けてきました。その際、いつもお答えしてきたことがあります。
それは、語弊を恐れずに言えば、「リクルートにあるのは、優れた教育プログラムなんかではありません。良い採用と、適切な場を与えることだけです」ということです。もちろん私が在籍した当時、それ以前から階層別の研修や各事業毎でのノウハウ・事例共有などのプログラムはありましたし、現在は洗練された最先端の教育研修プログラムも多数存在しています。
ただ、それでもなお、リクルートがどうして常に活力ある組織を保ち、事業を成長させ、新しいサービスやビジネスがその中から創出され続けるのかと言えば、教育研修にその源泉があるのではなく、「採用+場」の提供がOS(基本ソフト)となっているのです。
そしてこれはリクルートに限った話ではなく、その後、私は人材コンサルティング事業に20年近く携わってきましたが、業種や規模を問わず、活力ある人材・組織、そこから生み出される成長事業は、必ず「採用+場」から成り立っていることを目の当たりにしてきました。
◆“経験7割、薫陶2割、研修1割”。
人材育成・人材開発は、研修で行うのではなく、場(実際の職場、現場)だって? そんなこと言われてもにわかに信じがたい、という方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし、実はこれ、人材開発の研究調査からも導き出されているものなのです。
米国の人材開発研究機関であるロミンガー社の調査によれば、経営幹部として活躍するようになった人たちに「どのような出来事が役立ったか」について聞くと、「70%が経験、20%が薫陶、10%が研修」という結果であったそうです。
同社の共同創業者であるマイケル・M・ロンバルドとロバート・W・アイチンガーは1996年発刊の書籍『Career Architect Development Planner』の中で「70:20:10の法則」を提唱。個人の能力開発の70%は現場での業務遂行による直接学習(経験)によるもので、20%がロールモデルとなる人や、メンターからの学び、間接学習(薫陶)、10%がOff-JT(通常の仕事を一時的に離れて行う訓練)、オフサイトでの研修によるという理論で、これは国や文化圏、あるいは産業や職種を超えてほぼ同じ数値に収斂されるそうです。
個人の成長にとって最も重要なことは、研修を実施することや上司や先輩から学ぶことをはるかに超えて、まずは自分自身が日々の現場で良い経験をすることなのです。
これもリクルートでよく使われていたフレーズで「仕事の報酬は仕事」というものがあります。今ではいろいろな企業でも使われているように思うこのフレーズ、自分の任された仕事を一所懸命にやり成果を出せば、その次により大きな仕事を任せてもらえる。いまどきの世相、仕事価値観では「いやいや、そんなに仕事で負荷かけてもらいたくないっす」という感じかもしれませんが(苦笑)、成長志向のコア人材、リーダー人材として成長していく人には共通の姿勢だと思います。
更にはご存知の方もおそらく多い、「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ。」。リクルート事件が起こるまでのリクルートの社訓で、私もですが、このフレーズを座右の銘にされている人はリクルートOBのみならず、起業家の方などに非常に多く存在します。これこそまさに、自分自身の手で自分がチャレンジしたい場を手に入れ、そこでチャレンジし、成果を出すことで自分を成長させよ、ということを言っています。まさに、場、経験オリエンテッドなアプローチですよね。