2019/01/25
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第6回
スマホの中で世界を広げていくような体験を提供したい。【後編】
- イマ、ココ、注目社長!
- 経営
- リーダーシップ
- 株式会社TABI LABO 代表取締役 久志尚太郎氏
「僕は、《成長》とか《改善》という言葉があまり好きじゃなくて、そういうことって今はもう必要ないんじゃないかな、と思っています。それよりも《非連続な成長》じゃないですけど、ジャンプアップするような体験とか、感覚を得ることがすごく重要だと思っています。それを僕は《覚醒》と呼んでいるんですけどね」
前編に引き続き、株式会社TABI LABO 代表取締役の久志尚太郎さんにお話を伺います。
久志さんは同質性の高い日本社会になじめず、15歳で渡米。高校を飛び級で卒業した後は、古着の通販の仕事を始めたり、DELLでトップセールスマンになったり、死を意識する大病をしたり、世界のヒッピーコミュニティを回ったり……と波乱万丈の人生を経験しました。
29歳で同社を設立。スマホで記事を読んだ読者に現地に行ったような体験を提供し、彼らの世界を広げ、《覚醒》を促すことをめざすライフメディアに加え、広告業界のバリューチェーンをワンストップで提供する会社をつくったのです。
インタビューの後半では、久志さんに『TABI LABO』創業後の取り組みや経営へ思いなどを伺いました。
今まで培ってきたマネジメントスキルやビジネススキルは使わない。
――久志さんがおっしゃる「見えていない世界を見広げて行く」というのは、一般の方が形式的に過ごしていて見えていないところを、「世の中にはもっとこういうものがあるよ」と見せていく感じでしょうか?
久志 そうですね、僕らが気づいていない価値感とか世界観とかって、実際にたくさんあるじゃないですか? 「視点」なのか「事象」なのか、言い方はいろいろあると思うんですが、それを提供していくということです。
僕らのミッションに、「人々を覚醒させる」というものがあります。覚醒って「AWAKE」ですし、僕らからは見えないものが見えた瞬間。前に進んでいくうえで、すごく重要なことだと思っているんです。つまり、それって未来への「VISION」ですよね。
僕は「成長」とか「改善」という言葉があまり好きじゃないんです。そういうことってもう必要ないんじゃないかな、と。それよりも「非連続な成長」じゃないですけど、ジャンプアップするような体験とか、感覚を得ることがすごく重要だと思っています。それを僕は「覚醒」と呼んでいるんですけどね。
だから、社員に対して、例えば「お辞儀がすごく良くできるようになれ」とか「メールの文章が丁寧に書けるようになれ」といったことは、全く言ったことがない。むしろ、「そういうことを追求するな」と言っているんです。そうじゃなくて、「今自分たちが想像もしてないような未来とか可能性みたいなものを追求していく」ということがすごく重要だといつも思っています。
――そうしたことをやろうとして会社を創られたわけですよね。
創業時の話を聞かせてください。
久志 5人くらいで当時スタートしたんですが、大変でした。全員経験がないので。メディア業界や広告業界出身者が1人もいなかったんですよ。なので、とにかくわからない。毎日パニックですよね。
ただ、僕が起業家としてスタートしたときに一つだけ決めたルールがありました。それは《今まで培ってきたマネジメントスキルやビジネススキルを使わない》ということです。
これはどういうことかというと、例えば、マネジャーというのは「全て答えを知っていて正しくできる」というのが前提条件じゃないですか?しかし、特にスタートアップのときって、アントレプレナーは答えを知らないんですよね。間違うことの方が圧倒的に多いんですよ。
今も僕自身がそうですし、本当に間違うことだってある。なぜなら、やったことがないこと、自分たちが見えてない世界を突き進んでいるからです。なので、僕が言っていることはほとんど間違っている、と自分自身でも思っているんですよ。当時も、今も。
だからこそ、今まで培った、いわゆる組織作りとか、ピープルマネジメントとか、事業戦略といったものは使わない、やらない。それが、僕が混乱を突き進んでいく中での必然でしたし、創業当時から思っていたことです。できることをやるのは「過去」だと思う。できないこととか、見えていないことを広げていくこと、突き進んでいくことが、「未来」じゃないですか?