2017/02/13
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スペシャルコラムドラッカー再論
第61回
「顧客は誰か」「顧客はどこにいるのか」~2種類の顧客を認識しているか。
- マーケティング
- 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
「したがって、「顧客は誰か」との問いこそ、事業の目的とミッションを定義するうえで、最初に考えるべき最も重要な問いである。易しい問題ではない。まして、答えのわかりきった問いではない。だが、この問いに対する答えによって、企業が自らをどう定義するかが決まってくる」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)
ドラッカーは、ほとんどの事業には二種類の顧客がいる、という。
どういうことだろう?
分かりやすい例としてドラッカーが挙げているのが、カーペット産業だ。カーペットは当然、住宅内に置かれる。つまり住居者が消費者だ。
しかし、床張りカーペットの「購入者」を考えると、そこには住宅を施工する業者の存在がいる。つまり、住宅の建築業者・リフォーム業者が、もうひとつの消費者だ。
カーペット業者は、住宅購入者や既存の居住者に訴えかけることと並行して、施工・リフォーム業者に営業することが効果的である。
消費財メーカーには、主婦と小売店という二種類の顧客が存在する。
主婦がいくら買う気を起こしてくれても、店が棚に商品を置いてくれなければどうにもならない。
また、銀行には預金者と借り手という二方向の顧客が存在し、保険会社には保険契約者の獲得と預かり資金の投資運用という二方向の事業がある。
企業のシステム導入には現場でシステムを使う社員と、導入決裁を行うシステム部門の人間、あるいは購買部門の人が存在している。
「顧客はどこにいるのか」「何を求めているか」を問うことは、当たり前だが、本質的な問いだ。
これを掛け違えていることで、売れるべきものを売り切っていない企業は古今東西、かなり多くあると言える。
しかし考えてみれば、特に世の男性陣にとっては、「我が家の財布の紐」が誰に帰属しているかということで、“二種類の顧客”の存在について、腑に落ち実感できることでもあろう。