2016/04/18
1/1ページ
スペシャルコラムドラッカー再論
第22回
イノベーション発揮のための方策。
- マネジメント
- 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
そのために、自社の事業運営の仕組みの中に、企業家精神発揮のための具体的な方策を組み込んでいく必要があるとドラッカーは説く。
どのようなことを挙げているか、列挙してみると、まずはマネジメントの目を機会に集中させるために、日常の業務会議(「問題に集中する会議」)と、イノベーションのための会議(「機会に集中する会議」)を訳よと、ドラッカーは言う。もちろん、そこで話される内容も大事なのだが、この戦略会議を通じて養われる参加者の姿勢・価値観に与える影響のほうが大きいということを、ここでドラッカーは指摘している。要するに、イノベーションを発揮する「習慣づけ」をおこなえ、ということだ。
更に、トップマネジメント自らが「開発研究、エンジニアリング、製造、マーケティング、会計などの部門の若手と定期的に会っている」(『イノベーションと企業家精神』)という機会を年に2、3回でよいので持て、という。「下から上へのコミュニケーションの機会であり、若手が狭い専門分野から離れ、企業全体を見る絶好の機会である。さらにトップマネジメントが何に関心を持ち、それがなぜであるかと理解できるようになる。トップの側も若手の価値観、ビジョン、関心を理解できるようになる。そして何よりも会社全体に企業家的なものの見方を浸透させることができる」(『イノベーションと企業家精神』)のだ。
こうした活動を通じて、自社に企業家精神を浸透させることが大事だが、その仕上げとして、新しい仕事の仕方を提案した者には、必ず、提案の具体化について責任を持たせる必要がある。
「提案者は、しかるべき期日までに、会合を主宰したトップと参加者全員に対し提案の具体化について報告することにする。さらには、その提案を実施すると何が起こるか、提案が意味を持つためには何をしなければならないか、顧客や市場について何を前提としているか、どれだけの資金と人材が必要か、どれだけの時間が必要か、いかなる成果を期待できるかを明らかにする」(『イノベーションと企業家精神』)
こうした企業活動の土台・下地が徹底できれば、必ず早晩、自社の中から様々なイノベーション活動が発生するようになり、それがひとつの自社のカルチャーとなることは、間違いないだろう。
(続く)