2022/12/01
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ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術
第137回
本当に「仕事ができる」部下を育てようと思ったら
- キャリア
- ビジネススキル
- 石川 明氏 株式会社インキュベータ 代表取締役
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「知識やノウハウが豊富」だからといって、仕事ができるけではない。「知識」や「ノウハウ」は仕事をするうえでの必要条件ではあっても、十分条件ではない。では何が重要なのか。
「仕事ができる」とはどういうことか?
「あの人は仕事ができる」という言い方があります。 ビジネスパーソンであれば誰もが、そのような評価を得たいと思っているのではないでしょうか。しかし、「どういう人をもって仕事ができるというのか?」と聞かれると、明確に答えるのは意外と難しいものです。 それでも、「仕事ができる人になりたい」と願う多くのビジネスパーソンは、本を読み、セミナーを受講し、学校に通って熱心に勉強をしています。オンライン化が進んだことによって、「学び」へのアクセスがより簡単になったことも、勉強熱をますます高めているように見受けられます。
もちろん、これは素晴らしいことです。
こうした「知識」や「ノウハウ」を仕事に生かすことができれば、より一層成果を出しやすくなるでしょう。仕事における能力を向上させるうえで、「学ぶ」ことは不可欠。その努力を続けることは、非常に立派なことだと思います。
ただ、豊富な「知識」や「ノウハウ」を身に付けたビジネスパーソンが、会社の中で「仕事ができる」といわれるかというと、必ずしもそうではありません。むしろ下手をすると、「頭でっかちで実務はちょっと……」と思われてしまうこともあるのが現実。それは、私自身、ビジネススクールの教員を10年以上務めてきたなかで感じることでもあります。せっかく努力をしているのに、とてももったいないことです。
つまり、「知識やノウハウが豊富」だからといって、「仕事ができる」わけではないということ。「知識」や「ノウハウ」は仕事をするうえでの必要条件ではあっても、十分条件ではないということです。
組織の中で仕事で成果を出すために本当に必要な力とは
では、何が重要なのか?ずばり「実行力」です。「知識」や「ノウハウ」を活用しながら、具体的に仕事を前に動かしていく「実行力」こそが決定的に重要なのです。
私は、仕事とは「誰かの不を解消し、喜んでもらって、その対価をいただくこと」だと考えています。「不」とは不安、不満、不快などの「不」。この「不」を解消して、人々に喜んでもらうことこそが仕事の本質なのです。
そして、会社員の強みは、会社が有するリソース(ヒト・モノ・カネ)を活用して、世の中の「不」を解消できるということ。会社のリソースを使えるからこそ、1人ではとてもできない「大きな仕事」ができるのです。
ただし、そのためには条件があります。
社内の人々を味方につけ、組織を動かすことができなければならないのです。世の中の「不」を解消する素晴らしい事業企画があったとしても、それを組織の中で認めてもらえなければ仕事は始まりません。
あるいは、事業企画が承認されたとしても、社内の人々や関係部署、経営陣の感情的な共感が得られていない場合、その後サポートを得られないばかりか、さまざまな抵抗に見舞われるなどして、その事業は頓挫してしまうでしょう。
仕事を「実行」し、「結果」を出すためには、人と組織を動かすことから絶対に逃げることはできないのです。
しかし、これが難しい。
人や組織は、理屈だけでは割り切れない複雑な存在です。人はいつも合理的に判断や行動をするわけではありませんし、さまざまな要因で気持ちは揺れ動きます。経営陣、上司、部下など社内の人々を味方につけるためには、そうした「人間心理」への鋭い感性が求められます。
そして、そんな「人」が集まってできている組織は、さらに複雑な力学のもとに動いています。同じ会社内であっても部署ごとに利害は異なり、ときには対立関係に陥ることもあります。あるいは、「社内政治」と呼ばれるような力関係の中で翻弄(ほんろう)されることもあるでしょう。「組織力学」に対する深い洞察がなければ、組織を動かすどころか、組織に押しつぶされてしまうのです。