2020/06/01
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経営幹部・エグゼクティブのためのキャリア&転職を考える
第1回
「成長機会枯渇症」をいかに乗り越えるか・・・ ”優秀すぎる人”のキャリアの停滞
- キャリア
- 転職
昨年10月、三井住友フィナンシャルグループの子会社で37歳の社長が誕生しました。SMBCクラウドサインの三嶋英城社長です。保守的と考えられてきた大手金融機関が年功序列を捨て、30代の若手社長を抜擢するという驚きのニュースでした。
すでに、メガバンクグループですら30代で経営者になる時代になっています。一般の事業会社では20代の経営幹部も珍しくありません。今後、若手人材の活躍の場はますます広がっていくことになるでしょう。
一方、個人の側に目を転じてみると、昨今の20代、30代には、経営幹部になれる高い素養を感じさせるものの、キャリア形成の在り方に危うさを感じる方が少なくありません。 たとえばこのような方たちです。
・声がかかったら転職してしまう人材
現在は有名ベンチャーのマネジャー候補(20代後半)。職務遂行能力が高く、知人や元同僚からは、「うちに来ないか」と転職の誘いが絶えません。当人は「若いうちは、できる経験はなんでもしたい」というスタンスで、今後も転職が増えそうです。
・複数のベンチャー支援をするフリーランス人材
20代半ばで上場前ベンチャーのマネジャーとして活躍した後、複数のベンチャーをフリーランスとして支援しています。常に3~4社の支援を並行しながら30代を迎えました。ご自身での起業の可能性を残しつつも、現在のフリーランスの状態を続けるつもりのようです。
とくに優秀と思われる方で、この2人に似たようなキャリアを積まれている方は昨今非常に多くなっています。ただ残念なことに、このような方の中には30代半ば以降、ご自身の成長が感じられなくなったり、企業や知人からの転職や仕事のリクエストが急激に減る方がいらっしゃいます。
私は、上記のように、優秀な若手人材が積極的(非伝統的)なキャリア選択をする背景にある個人の認識を「成長機会枯渇症」と呼んでいます。
成長機会枯渇症は、最新テクノロジーや革新的サービスに触れる新たな機会、優秀なメンバーと切磋琢磨する機会を強く求める、優秀(すぎる)若手がおちいりやすい症状です。
焦りにも似た感覚をもちながら刺激的な機会を求めるため、仕事の幅は広がりますが、深掘りができず、何もかもが中途半端になり、徐々にキャリアの閉塞感を感じるようになるのです。
このような状態を招かないようにするためには、どうすればよいのでしょうか。
簡単に言うと、ご自身が「没入できるテーマ」の設定が必要です。
たとえば、「だれもがいつでも働ける場を提供したい」とマッチングプラットフォーム事業に注力している20代後半の社長。「地方企業や中小企業を支援するビジネスインフラを作る」と30代前半で独立し、新サービスを立ち上げた社長。私が知るこれらの方々は、テーマに没入する中で、会うたびに一回りも二回りも大きく成長されていきます。 冒頭で紹介したSMBCクラウドサインも、三嶋社長自らの企画が認められ社長に指名されたそうです。
これらの方たちは、何らかのきっかけから独自のテーマを発見し、その事業に注力することで、社会から評価されるようになってきた人たちです。
デジタル化の発展によって、現在は、若くてもさまざまな機会を得やすい環境があります。皆さんの目の前にも、刺激的な機会がぶら下がってくるかもしれません。
その時に、少しだけ考えてみてください。この機会は、自分が注力すべきことか、本当にやりたいことなのか。これだけで、10年後、20年後に、あなたが得られる機会の質が大きく変わってくることでしょう。