TOP 理論で固める経営戦略 VUCAと企業戦略

2018/07/06

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第1回

VUCAと企業戦略

  • 理論で固める経営戦略
  • 経営
  • 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所 佐々木一寿

 

◇VUCAをきちんと理解する

今どきの経営を語る際に、よく話題となるVUCA。だが、その意味するところを理解している人はどれだけいるだろうか。

 

たとえばよくあるVUCAの持ち出され方はこんな感じではないか。
「我が社を含め、業界を取り巻く状況はVUCAの環境下にあり、見通しが立ちにくく厳しいというのが現状だ。ただ、困難な状況ではあるが、他社も同様であり、我が社においては一丸となってこれに立ち向かい、成果を出すべく皆で力を合わせてがんばっていこう」

 

これは、社内スピーチとしては一定の役割は果たせるだろう。ただこれでは、VUCAが何かに関してフワフワしすぎてよくわからない。さらに言えば、これではVUCA以外のバズワードが入っていても、つまり何であっても通用してしまう論法でもある(たとえば「デフレの深刻化」などでも成立する)

 

それでは事の本質を知らないままになってしまいかねないのではないか。そんな危惧を私は持っていて、今回は、VUCAを理論と紐づけしながらきちんと説明していきたいと思う。

 

 

◇VUCAのリスク論的解説

VUCAは以下の頭文字をとっていると説明されている。

 

Volatility(ボラティリティ、変動性)
Uncertainty(不確実性)
Complexity(複雑性)
Ambiguity(曖昧性)

 

今回使うのは、経済学分野のファイナンス理論だ。理論部分に難解さを感じる人は、適宜読み飛ばしていただいても結構だ。論旨をおおまかに追えさえすれば、結論の納得感も大きく得られるだろう。

 

ファイナンス理論ではリスクの計量化が研究されている。リスクとは、未来に発生する価値の不確実さの、蓋然性を伴った予期のこと。その蓋然性への推定から定量化され、将来の価値を現在に引き直すときの割引率(%)として表される。ざっくりといえば、リスクが大きい状態というのは、将来得られる価値からの割引率が大きいことを示す。そのリスクの要因とは、主にボラティリティ(V)への予期だとして扱われている(主に金融工学の分野)。

 

また、ボラティリティ以外のリスクの存在の指摘がある。フランク・ナイトらによって提唱されるこのリスクはボラティリティと区別され、不確実性と呼ばれる(VUCA-V=UCA)。

 

ここでは、ナイト流に則って、ボラティリティをV、不確実性をUCAと区別することにする。

 

つまり、全リスクをrと置くと、r=V+UCA と書ける。*1

 

リスクとVUCAに関しては細かい論点や注釈は無数に有りうるが、VUCA理解の要諦はVとUCAの区別にある。このことは本論で決定的に重要となるので、ここで強調しておきたい。

 

 

(*1:【CAPM】re = rf + β(rm-rf) + α 参照 )

 

 

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プロフィール

  • 佐々木一寿

    株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所

    横浜国立大学経済学部国際経済学科卒業、大手メディアグループの経済系・報道系記者・編集者、ビジネス・スクール研究員/出版局編集委員を経て、現在は組織行動研究所(リクルートマネジメントソリューションズ内)にて経済学、経営学、社会学、心理学、行動科学の研究に従事。著書に『経済学的にありえない。』(日本経済新聞出版社刊)、『「30分遅れます」は何分待つの?経済学』(日経プレミアシリーズ、日本経済新聞出版社刊)などがある。