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2018/04/09

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スペシャルコラムドラッカー再論

第117回

マネジメント教育の二つの側面。

  • エグゼクティブ
  • マネジメント
マネジメント教育には、相互に関係する二つの側面がある、とドラッカーは語る。

1)第一の側面は、マネジメント開発である。その目的は、組織の健康と存続、成長にある。
2)第二の側面は、マネジメント教育そのものである。その目的は、組織の一員としてと同時に、人間としてのマネジメントの人間の健康と成長、成果にある。

「マネジメント開発は、それがどのように行われようとも、あくまでも、対象は組織の機能であり活動である。これに対しマネジメント教育は、たとえそこにおいて企業や上司が重要な役割を果たすとしても、対象はあくまでも個人である。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)

少しわかりにくい感じもあるが、マネジメント開発は、「わが社が、今日とは異なる種類の市場、経済、技術、社会において成果をあげ、目的を達成するには、明日、いかなる種類のマネジメント人材を必要とするか」との問いからスタートする、とドラッカーは解説する。
要するに、そのために必要なマネジメントの年齢構成、獲得しなければならないスキルや専門性、またその組織構造や職務の設計を扱うものが、マネジメント開発に該当する。

「かくしてマネジメント開発は、革新者、組織破壊者、批判者としての役割を果たす。その機能は、「われわれの事業は何か。何であるべきか」を問うことにある。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

これに対して、マネジメント教育は、人に焦点を合わせるものだ。

「その目的は、人の能力と長所を最大限に発揮させ、成果をあげさせることにある。目的は卓越性にある。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

ここでもドラッカーは、そのベースには本人が持つ自己実現に対する内発的動機がある(動機は外側から与えることはできず、内側から来なければならない)と語っている。
よってマネジメント教育は、「成果をあげたものは何か。優れた成果をあげることができるものは何か。その長所を最大限に発揮するために克服すべき条件は何か」に焦点を合わせた評価からスタートする。
そしてこの評価は、本人による自己評価と、上司による積極的な指導との共同作業で行われるべきだと、ドラッカーは説く。

「自己評価は、上司と共に設定した目標に基づいて行われなければならない。それらの目標に照らした成果からスタートしなければならない。見込みからスタートしてはならない。「何がよくできたか。何が何度もよくできたか」を問う必要がある。こうして強みを明らかにするとともに、その強みをフルに発揮する上で障害となっているものを明らかにする。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

ドラッカーは自己評価を土台としつつ、それが甘すぎたり厳しすぎたりすることへのチェック機能として上司とのすり合わせを組み入れている。

更に望ましいこととしてドラッカーは、「人生に期待するものは何か。自らの価値観、願望、進むべき方向は何か。自分自身に対する要求や、人生への期待に沿って生きていくには、何を行い、何を学び、何を変えるか」について、自分をよく知り、敬意を払ってくれている人から問いかけてもらうのがよいと語る。

上司の責任は、重大だ。

「自己評価は、自らの果たすべき貢献ともつべき経験について、ニーズと機会を明らかにするものでなければならない。すなわち、「最も早くかつ最大限に能力を伸ばすには、いかなる経験が必要か」を考えさせるものでなければならない。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

理想的だが、実際に、どうすれば、それは実現できるのだろう?
次回、自らの成長を促す自己啓発を、上司はマネジメント陣にどう働きかければよいのかについて、見てみたい。

(続く)

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プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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