TOP スペシャルコラムドラッカー再論 「一人ひとりが自らのCEOである」。

2016/10/03

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スペシャルコラムドラッカー再論

第45回

「一人ひとりが自らのCEOである」。

  • エグゼクティブ
  • マネジメント
知識労働者の世界を最も早く説いたドラッカーは、「知識労働者の時代には、一人ひとりがCEOたるべきである」「自らが自らのCEOとならなければならない」と力説した。

「CEOにはCEOの仕事がある。それはCEOにのみできるCEOがしなければならない仕事である。しかも今日では、あらゆる知識労働者がCEOのように考え、行動しなければならない」

組織のミッション、ビジョン、個性、行動、成果を定めるものがCEOである。
ドラッカーはCEOの条件として、次の3つを挙げている。

第一に、ビジョンを持つこと。
第二に、組織に個性を与えること。
第三に、人を動かすこと。

ビジョンを持つには、全体を見渡せる力が必要だ。全体を観るとは、「なされるべきことは何か」を考えることである。
広く市場、社会を見渡すことで、「われわれの事業は何か」「何であるべきか」「何であってはならないか」というドラッカーの基本の問いに答えることができる。これが自らのミッション、ビジョンを定める。

CEOの個性はおのずとその組織に反映される。ある意味、その企業らしさとは、それを率いるCEOの「らしさ」の反映なのである。

「一人ひとりが自らのCEO」である知識労働者は、自らの組織がどこにいて、どこに向かっているかを知ることで、ビジョンを持つことができる。
そして、自らの価値観と情熱の対象を知ることで、自らの個性を活かし働くことができる。つまりは、価値観の異なる組織で働くことは、そもそも大きな間違いなのだとドラッカーは言う。ここは我々、経営層・リーダー層の人材コンサルティング事業を営むものとしても、大いに共感する部分だ。

「CEOたる者は、組織の目的、価値観、原則を体現する存在でなければならない」

このことと、「一人ひとりが自らのCEO」であれということを合体させれば、我々知識労働者とは、そもそも社長(という役割肩書き)であろうとなかろうと、自らのビジョンを持ち、個性を発現し、周囲の人たちに積極的に関わりながら働くことが必要であり、またそのように働くことが、自身の価値・存在意義を発揮し、組織や社会に貢献することにつながるのだということが、改めて腑に落ちて理解できる。

これが、やりがい、の本質なのだと思う。

プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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