TOP スペシャルコラムドラッカー再論 「仕事の報酬は、仕事」。(後編)

2016/09/12

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スペシャルコラムドラッカー再論

第42回

「仕事の報酬は、仕事」。(後編)

  • エグゼクティブ
  • マネジメント
前回、ドラッカーは仕事の動機付けについて、「意味あるものは、満足ではなく責任である」と語っており、仕事で責任を持たせる方法には「人の正しい配置」「仕事の高い基準」「自己管理に必要な情報」「マネジメント的視点をもたせる機会」の4つがあるという彼の考えをご紹介した。

まず第一に、適切な人材の採用と配置は、なによりも重要だ。それがすべてと言ってもよいだろう。
教育の前に、まずは「採用と配置(僕は「場を与えること」と言っている)」、それがなければ、いくら採用にコストをかけても笊から零れ落ちる水だ。

ドラッカーは、面白いことを言っている。

「人は自らを正しく配置する能力を持つ」(『マネジメント——課題、責任、実践』、1973年)

そう、人はいずれ、自分にフィットした場を見つけていくものだ。ただし、それは必ずしも最初からとは限らない。幾つかの職務を経験していく中で、自身の適性ややりがいを見つけていくのが、一般的な適職へのたどり着き方だ。

「継続的かつ体系的な配置の努力こそ、人と仕事のマネジメントにおいて重要な課題の一つである。それは採用時に行えることではない。働く人たちが仕事を知り、彼ら自身が知られるようになったのちに行えることである。それは一度で行えることではない。配置にかかわる決定は、継続的に点検していかなければならない」(『マネジメント——課題、責任、実践』)

人は成長し、変化する。適切な配置、とは、だから固定的なものではなく、常に継続的に、そのときどきにおけるベストを本人も経営/会社も確認し探し続ける必要がある。

二つ目の「仕事の高い基準」を持つこと、求めることの重要さは、僕もリクルートという会社で育ち、それが当たり前のことになってしまっているのだけれども、一般的にはそうも思わない人も多いことも知っている。

「仕事について高い基準を要求することほど、仕事の改善に挑戦させるうえで効果的なものはなく、仕事と自己実現の誇りをもたらすものはない。逆に、最低の水準に焦点を合わせることほど、人の動機づけを破壊するものはない」(『マネジメント——課題、責任、実践』)

こうドラッカーは説明している。
低い基準は、なあななな状況を組織に蔓延させ、基準を上回ることのできる優秀な人が悪い影響を受けてしまう(そこそこレベルの仕事まで、仕事ぶりを落としてしまう)のだ。

成長のためにも、自らの尊厳や誇りを保つためにも、マネジメントは高い基準を各人に求め続けることを必要とする。

第三に、各人が目標に照らして自らの仕事を評価するために「自己管理に必要な情報」を提供することが、仕事の動機づけには必須だとドラッカーは言う。

これは、本人たちが求めているか否かではなく、経営として会社としてどこまで働く人たちをインボルブしようと考えているかだと言う。
主体性を重視する考えから来ているが、企業は従業員に対して、自らの行動の結果についての責任を持たせることが必要なのだ。

「そのためには働く人が、自らの仕事が全体の活動といかなる関連にあるかを知ることが必要である。また自らが、企業に対しいかなる貢献をしているか、企業を通じて社会に対しいかなる貢献をしているかを知ることが必要である」(『マネジメント——課題、責任、実践』)

繰り返しとなるが、マネジメントが彼らに対してそれらの情報を提供するよう努める必要があるのは、「彼らが求めるからではなく、彼らが情報をもつことが企業の利益に最も適うから」なのである。

最後に「マネジメント的視点をもたせる機会」について。

これがなぜ、動機づけとなるのかといえば、「(働く人は)企業全体の成功と存続に責任を持つ経営管理者のように企業を見るときにのみ、最高の仕事を目指して自らの責任を果たすことができる」(『マネジメント——課題、責任、実践』)からだ。
これは、マネジメント的立場に立ったり、マネジメントに参画することによってのみ獲得できることなのだ。

仕事に対する誇りや達成感、自らの重要度への認識といったものは、与えられるものではなく(褒められたとか認められたという承認欲求レベルのものは低次のものだ)、自らの仕事にたいする意思決定や実行、また自らが属する職場コミュニティの運営に対する積極的、主体的かつ責任ある参画によってのみ獲得される。

ここに、マネジメントが従業員に対して、権限移譲や主体性を発揮することを求めることの、本質的な意味がある。

さて、皆さんの職場においては、「人の正しい配置」「仕事の高い基準」「自己管理に必要な情報」「マネジメント的視点をもたせる機会」の4つ動機づけの源泉は、どれくらい提供されているだろうか?
ぜひチェックしてみて頂ければと思う。

プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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