2023/07/20
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ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術
第160回
組織を短期間で劇的に改革する方法――自分の内面を見る&会計理解
- キャリア
- ビジネススキル
- 松本 めぐみ氏 松本興産株式会社 取締役
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社員達と一緒の景色を見ながら皆でアイディアを出し合いながら業績を上げる方法はないのか? と模索した結果、生まれたのが「風船会計メソッド」。
私は中小企業の社長と結婚した事で急に経営に携わる事になりました。8年程前の事です。学生の頃は電気電子工学科を専攻、卒業後も半導体装置メーカーのエンジニアとして働いていたので「経営」とは程遠い世界にいました。会社員の頃はとにかく目の前に与えられた仕事をこなすだけだったので、会社の売上、利益など全く聞いた事もありませんでした。5年程勤めて退職したのですが、その後会社は買収されました。その時に漠然と(会社とはずっと“ある”ものだと思っていましたが、ある日突然なくなるものなのだ)という事を体感しました。 実際に夫の会社に取締役として入り経営の過酷さを知ります。
(1)課題に対して戦術、戦略を考え対策を取ってみるもののモグラの数は減りません。また新しいタイプの問題が起こるし、良い方向に向かいだした!と思っても人が変わるとチームが崩れたりします。“人”起因でチームの質、結果が大きく異なってくるのです。
(2)業績を上げたり、トラブルに対応する為必死に色んな方法を試しましたが、うまくいかなかったし、社員達の心はどんどん離れていきました。私が一生懸命になればなるほど社員達を苦しめて、嫌われていきました(笑)
(3)一気にモグラ達を解決する方法はないのか? そして、もっと社員達と一緒の景色を見ながら皆でアイディアを出し合いながら業績を上げる方法はないのか? と模索しました。
2、そのモグラ達を一気につぶす方法が「風船会計メソッド」です。このメソッドは2つのテーマを内包できるよう考案しました。1つ目は、「業績を上げられる事」、2つ目は「経営者も従業員も幸せ」になれる事。
(1)戦術、対策、ルールなど外側を変えても効果はなかったし、難しいメソッドは巻き込める規模に限界があり、持続しません。しかし、経営者やリーダーの心の内側を変えると劇的に効果がありました。 リーダーが自分の中にある「怖さ」を起点に部下達とコミュニケーションを取っているのかどうか?で現実は全く異なってきます。私自身、もともと、努力して自分の足りない所埋めるように生きてきたのですが、ある臨界点までいくといくら頑張っても突破できない事を実感しました。知識を付けたり頑張ったりして外側からどうにかしようとしても一時的に良くなったと思えるだけで現実は変わりませんでした。
(2)そして、外側は諦めて内面を奥深く潜っていくと「取締役」という立場に「怖さ」がある事に気付きました(社長の奥さんというだけで取締役になった。結果を出さないと皆に受け入れてもらえないのではないか?)(何でも把握しておかないと何かトラブルが起こった時に自分が使えないと思われるのではないか?)など。本当はずっと恐かったのにそんな自分は無視し続けて頑張る事で克服しようとしていました。そして、「怖さ」がある事に初めて気付き、その怖さは克服するのではなく、「怖さがある」とまるっと受容しました。心の中に怖くて体操座りしている小さな自分を抱きしめてあげるような感覚でした。
(3)また、怖いのは会社の事がはっきりと見えていなかったのも大きな原因だと気付きました。自分がどんな車(会社)を運転していて、残りのガソリンはどれぐらいなのか? 進んでいる道は合っているのか? 確証が無かったのです。
(4)どうすれば自分が安心するのか? 会社全体を絵やイメージで俯瞰する事ができれば安心できると考えました。数字や文字などの左脳的情報を入れても全体像をつかめないから不安は消えないのです。まずは数字や文字など具体ではなく抽象度をあげてイメージを描き輪郭を捉える事が大切だと感じました。
そして、会計は会社の全ての事、物、人、情報の集合体だから会計を地図のように描けば会社全体が見えるはずだと思いました。それまでPLはよくみて売上、経費、利益は注意深く分析していましたがBSは見ていなかったのです。理由は見ても面白くなかったから。しかし、BSも豚の貯金箱にして描いていくと、数字と文字だけではつかめなかったストーリーがハッキリと見えてきたのです。
(5)そして、風船会計を社員達に教え始めると数カ月程で効果が出始めました。社員達が風船会計を使う事でBS、PLを完全に理解してくれ、自分達で考え、自発的に行動したり、利益が増えるよう行動してくれるようになったのです。経営者やリーダだけが考えるのではなく、皆で考える自律分散型の組織へと変容していきました。