2022/09/20
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イマ、ココ、注目社長!
第266回
検査数5年で2万件超。日本発の不妊治療向け細菌検査、世界へ。【前編】
- 経営者インタビュー
- 経営
- 組織
- 注目企業
- 桜庭 喜行氏 Varinos株式会社 創業者/代表取締役CEO
体外受精で生まれた子どもは、2019年に年間6万人を超え過去最多を記録しました。2019年は、14.3人にひとりが体外受精で生まれたことになります。
これだけ不妊治療が浸透するなかで、不妊治療を受けている女性向けの「子宮内フローラ検査」が注目を集めています。子宮内フローラ(子宮内に存在する多種・多様の細菌の集まり)の環境が乱れると体外受精の成功率や妊娠・生児獲得率が下がることに着目した検査で、バイオベンチャーのVarinos(バリノス)が独自に検査方法を開発し、2017年に提供を開始。累計検査数は5年で2万件を超えています。(2022年8月末時点)
前編では、創業者の桜庭喜行さんが起業するまでの道のりを尋ねました。
(聞き手/川内イオ)
理化学研究所から小児の難病治療で全米トップクラスの病院へ
――Varinos(バリノス)は、2017年12月に世界で初めて子宮内フローラ検査の実用化に成功し、現在は世界的にトップの技術を持つ不妊治療向け細菌のゲノム(全遺伝情報)検査を行っています。まずはそこに至る道のりを教えてください。そもそも桜庭さんが医療や遺伝子に興味を持ったのはいつ頃ですか?
桜庭 高校生の時から、生物の授業を受けている時などに「生き物って面白いな、不思議だな」と思っていました。その頃、両親からヒトゲノム計画の発足に関する新聞記事を見せられたんですよ。20年かけて人間のゲノムを同定するという壮大なプロジェクトで、「20年後、世界が変わるんだろうな」と思ったのを覚えています。
その記事を読んで、遺伝子を勉強するって面白そうだな、かっこいいなと思うようになっていました。大学受験では、埼玉大学の理学部を練習で受けて、合格していたのですが、もともと医者になろうと思っていたので、一浪して医学部を受験するために代ゼミに入学金も払っていました。ただ、本当に自分のやりたいことを突き詰めると遺伝子に関わる研究ではないかと思い、埼玉大学の理学部を訪ねて、遺伝子の研究ができるかどうかを確認し、できると言われたので入学を決めました。
――医者の道を諦めての選択だったんですね。2001年に埼玉大学大学院で理学博士を取得後、理化学研究所ゲノム科学総合研究センターに就職し、2008年にアメリカのセントジュード小児病院に転職されています。どういう流れで渡米することになったのですか?
桜庭 研究所では国家プロジェクトの研究員になり、マウスのゲノムに関するプロジェクトに参加していました。ところが、2008年にセンターが解散することになったんですよね。それは、ゲノムの配列を同定してデータベース化してくとい...
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