2022/09/29
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2030年に向かえ! リーダーのためのキャリアメイク戦略
第41回
「経営者力診断」を活用して自分の現状を把握する。
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- 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
「描く力(構想力)」と「決める力(決断力)」の「質×量×スピード」が問われる「経営人材」
問いを立てる「経営人材」は、「やり切る力」「まとめる力」に加えて、「描く力」と「決める力」の質と量とスピードが問われます。
「描く力(構想力)」は、しっかりと自社の事業ビジョンや、個々のサービスの到達点、目指すべき姿を描く力です。「描く力」の要素は3つあります。1つめは、「広く市場の動き、事業環境に目配せできているか」。つまり、世の中の情報について、インプットをしっかりしているかどうかです。2つめは、「自分なりのビジョンを創出しているか」。自分なりの思いや考え方をアウトプットしているかどうかです。そして、3つめはアイデアをただ出すだけでなく、「ビジョンや構想を戦略や組織に落とし込んでいるか」です。
現状把握について、担当する市場と組織の状況を正確に分析し、今後発生し得る「機会と脅威」を見極める。ビジョンの創造について、担当事業(会社)や部門がめざす将来の姿を自らの考えとして整理する。戦略策定と組織形成について、ビジョンの実現に向けて組織の力を最大化する人材・機能の組み方をデザインし、体制をつくり上げる。こうしたことが重要になります。
では「描く力」を高めるにはどうしたらいいのでしょうか。市場(世の中の動き)を見る、アンテナを張り、情報をキャッチする。大局(大きな絵)から考えるようにする。自分が関わる事業・商品・サービスの仕組みを各論で知る。論理思考のフレームワークを体得しておく。こうしたことを通して、「描く力」が高まるはずです。
「決める力(決断力)」ですが、いうまでもなくリーダーとは毎時間、毎分、毎秒が決断の連続です。そこで「決める力」には2つの要素があります。1つは、「事業や経営での意思決定への主体的な参画があるか」。2つめは、「多様な意見・利害関係の中でも最適な判断をすべく動いているか」です。みんなで議論をして、最終的にはトップが決める「衆議独裁」が重要ではないかと思います。
事業経営の意思決定への参画について、関係者の利害が一致しない状況においても、ビジョンの実現に向けて全体最適な判断を主体的に下している。多様な利害・意見の中での全体最適判断について、高い視座と広い視野から合理的かつ徹底的に思考することによって、価値を創造しビジョン化を実現するための事業戦略や部門戦略を策定し、決断している。こうしたことが重要です。
「決める力(決断力)」を高めるには、たとえミドルマネジメントの方だとしても、意思決定の頻度を上げる。言葉を濁さずに「言い切る」癖をつける。そのために考え尽くしてアウトプットする。常に結論からシンプルに話すことを心がける。頭の中で「要するに、何を」(決めればよいのか)と自問自答する癖をつける。こうしたことによって、「決める力」が高まります。
最終的に求められ続ける、学び続ける力「学習力・習慣力」を持つ人材
最終的に求められ続けるのは、「学び続ける力」を持つ人材です。学び続ける力とは「学習力・習慣化力」。これまで学んだことだけでなく、環境や技術が変わったところで、もう一度学び直していくリスキリング力です。若いときに学んで終わりではなく、年齢を重ねても学習が必要です。そこは加齢とともにどうしても落ちてきますから、自分を律する意味も含めて学習力を意識することが大事です。
習慣もとても大事です。方法記憶化。つまり、良い型を身につけていると再現性が高いわけです。学び続けていくことの中で、良い習慣を身につけていると良い習慣の再現サイクルが現れます。そのため良い行動のベースができて、他でゼロから考えなければいけないことに投資ができます。
学び続けるということには、ピュアに新しいことを学び続けるというベースと、習慣化という2つの意味合いが込められています。「学び続ける力(学習力・習慣化力) 」の要素を集約すると、「過去の蓄積に留まらず、常に外部からの新たな知見を吸収しようとしているか」「常に学んだことを現場に活かし、現場で沸いた疑問や不足事項を学びに行っているか」ということになります。
「自らの見解だけに固執することなく、多様な考え方を柔軟に取り入れ視界を広げている」。「現場に活かすようなことを意識したうえで、関連する知識・技術を学ぼうとしている」。そうした方が、学び続ける力が高い方だと認識されています。
では、「学び続ける力(学習力・習慣化力) 」を高めるにはどうすればいいのか。日常の中にインプットのルーティンを入れることがとても大事です。通勤中にネットニュースを見る。定期的に何かを観に行く。何でも構いません。日常的にインプットルーティンを組み入れている方は学び続ける力が高まります。意識はあって情報収集したいと思っていても、ルーティンを組み入れていないとなかなかそれができません。まだやっていない方がいれば、ぜひ取り入れていただきたいと思います。
凝り固まらないようにすることも大事です。放っておけば自分の好きな情報ばかり取るので、時折、自分の守備範囲・興味範囲から外れる情報に目を向けてみましょう。また、事業上、業務上、何か新しいことや気になることに出会ったら、それに関することを徹底的に調べてみることも重要です。
結局、最終的に求め続けられるリーダーは、「学び続ける力(学習力・習慣化力)」を継続的に発揮し、伸びしろがあり、いくつになっても成長・改善・改革ができる人です。人生100年時代、定年70歳となる中で、求められるのは長く活躍を続けられるリーダーであり、そうした皆さんが好奇心旺盛で、若々しくて、エネルギッシュなのは、学び続ける力を継続的に発揮しているからだと思います。
まとめ
経営者力は、描く力(構想力)、決める力(決断力)、やり切る力(遂行力)という3つの因子に加え、まとめる力(リーダーシップ力)と学び続ける力(学習力・習慣化力)によって構成されます。概ねここにすべてが当てはまります。この5つを覚えておくことは有益だと思います。
「経営者力診断」(経営人材度アセスメント)は、この5つの力をチェックできるオンライン診断です。簡易版は無料でご提供していますので、日常の中でセルフチェックしていただいて、「今自分はこんなところにいるんだ」「今後はここを強化していこう」というように自分の現状を把握していただきたいと思います。
法人でも使えるようにしているので、自社の管理職登用・経営幹部登用の参考資料として、経営層育成・経営層選抜の参考資料として、活用していただきたいと思います。自社の幹部採用時の選考の参考資料としても有用だと思います。
なお、詳細版は有料ですが、簡易版に加え「5つの力」の診断結果および、「5つの力」を構成する13の要素についての詳細診断結果をレポートしますので、用途に合わせて使い分けていただければと思います。
今日は、「幹部人材」としての力点がある「やり切る力」と「まとめる力」、「経営人材」として「質×量×スピード」が問われる「描く力」と「決める力」。これについてご理解いただけたのではないかと思います。また、生涯リーダーとして成長を遂げて、力を発揮していただくために、「学び続ける力」がレバレッジとして重要です。さらに、経営者としての「思考、行動」は何歳になっても変えられるし、開発できるので、5つの力とそれを構成する13の要素にアプローチしていただきたい。それを手軽にチェックしていただくものとして、「経営者力診断」を活用していただければと思います。