TOP 社長を目指す方程式 部下の自己実現は会社の利益になる 上司が支援できる3つのフィードバック

2022/02/01

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社長を目指す方程式

第83回

部下の自己実現は会社の利益になる 上司が支援できる3つのフィードバック

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今回の社長を目指す法則・方程式:國武 大紀 氏

「<価値観><視野拡大><軌道修正>のフィードバック」

 
「部下にやりがいを持って業務に取り組んで欲しい」
多くの上司の方が、少なからずそう願っていることと思います。しかしその一方で、実際の業務と彼らの価値観をどう結びつけてあげればよいのか分からない…そんな悩みを抱く人も少なくないと思います。今回は、部下の成長を後押しする方法に悩む上司の皆さんに、今日から使えるフィードバック方法をご紹介します。

 

パーパス、自己実現は綺麗事?

いきなりですが、皆さんの考えは、以下のAとBどちら派でしょうか?

 

A.仕事にやりがいは欠かせない
B.会社は個人のためのものではない。自己実現を仕事に求めるなど甘い

A.企業にも個人にも、それぞれパーパス(目的)が必要だ
B.理想を語るのはいいが、現実はそう甘くない

 

これはどちらも一理ある考え方ですが、先日私が担当している別の連載で「企業と個人、それぞれのパーパスが大事になっている」という話を書いたところ、「話はよく分かるけど、実際にそのようにできている会社は存在しないのでは?」「理想論であって、現実的ではない」という声が複数寄せられて、なるほど、そう思っている人は多いのだなぁと思いました。

 

ハーバード大学ビジネススクールのテレサ・アマビール教授らの35年に渡る研究で明らかになったのは、「部下やチームにとっての価値観やテーマ、やりがいある仕事が前に進むように支援することが、個人と組織の創造性や生産性を高めるのに最も効果的である」ということでした。
これはつまり、個人や組織のパーパスややりがいを支援する(=自己実現を支援する)ことは、理想論でも綺麗事でもなく、結果を出したい上司、事業責任者、経営者にとっては至極実利的なことだということを示しています。

 

エグゼクティブコーチの國武大紀さん(株式会社Link of Generation 代表取締役)は、近著『その「ひと言」でチームが変わる 最高のフィードバック』で、部下の能力やパフォーマンスを高め、成長につなげるために、部下の自己実現を支援する3つの視点からフィードバックを行うことが効果的だと言います。今回はそのフィードバック方法をご紹介しましょう。

 

部下の価値観を具体化する

1つ目は、<価値観>のフィードバックです。価値観のフィードバックの目的は「部下の仕事に関する価値観を理解すること」にあります。

 

人は価値観というフィルターを通じて行動を起こします。仕事上での価値観の影響で最もわかりやすいのは、その仕事に対して意味を感じているか、その仕事が好きか嫌いか、でしょう。皆さんは部下が仕事に対してどのような価値観を持っているか、ご存知でしょうか? まず、彼らを知ることが大事なステップだと國武さんは言います。

 

では、そのためにはどうすればよいか。まず、部下に「仕事に対する想いや考え方を聞かせて欲しい」とシンプルに伝え、じっくり聴く時間を取りましょう。食事やティータイムでも良いと思いますし、流行りの1on1を設定しても良いかもしれません。

 

「入社した当初、どんな気持ちで仕事に取り組もうと思っていたの?」
「その頃と今を比べると、仕事に対する意識や考え方に何か変化はあった?」
「仕事にやりがいを感じてる? その理由は?」
「仕事が楽しいのはどんなとき? 逆にしんどいのはどんなとき?」
「仕事で大切にしていることは何?」

 

これらに対して、「それは具体的には?」「例えば?」などで深堀りして、部下の価値観を具体化していきましょう。そして、部下が話し終わったところで、最後に質問します。

 

「話してみて、何か気が付いたことや感じたことはある?」

 

先に数々の質問に答えたことで、部下は自分の言葉で確認することができたため、思考が整理されているはずです。モヤモヤしていたものがはっきりしたり、何かに気づいたり、悩みが解決したりします。それと同時に、上司のあなたは、部下がどのような価値観を持ち、仕事に対してどのようなことを考えていたのかを知ることができるでしょう。

 

部下の成長を支援するために、部下の価値観を深く理解することは、とても大切な第一歩となるのです。

 

部下の自己実現を社会貢献と接合させる

二つ目が、<視野拡大>のフィードバックです。
視野拡大のフィードバックの目的は「自己実現から社会貢献につなげていくこと」にあります。

 

仕事での自己実現は、確かに部下の成長につながります。しかし、それは単なる自己満足とは異なるのだと國武さんは強調しています。私も全く同意します。
自己満足、独りよがりではない、発展性のある自己実現へと変化させていくために、視野拡大のフィードバックを行うのです。

 

視野拡大の問いかけは、例えば次のようなものです。

 

「あなたの仕事は、どんな風にお客様の役に立っていると思う?」
「あなたの仕事は、どれくらい暮らしを豊かにしていると思う?」
「あなたがお客様だったら、あなたの仕事にどれくらい感謝するかな?」

 

話し終わったら、先ほどと同様、振り返りの質問します。

 

「話してみて、何か気が付いたことや感じたことはある?」

 

自分の仕事がお客様や社会とどうつながっているのか、どう役に立っているのか、想いを馳せてもらいましょう。もちろん、上司のあなたもご一緒に。

 

そうすることで、部下個人としての仕事上での自己実現が、社会貢献という視点と合致し、結果としてそれが「会社がどのようなパーパスやミッションの下で活動しているのか」ということと結びつくのです。

 

部下の挫折を回避、軌道修正させる

三つの目のステップが<軌道修正>のフィードバックです。
軌道修正のフィードバックの目的は「理想と現実とのギャップを解消していくこと」にあります。

 

部下が思い描く仕事上での自己実現。これを成し遂げていく過程には楽しいことばかりではなく、困難や壁にぶち当たることが多々あるでしょう。そこで立ち止まったり、心が折れてしまう人は、自己実現を果たすことはできません。

 

部下が直面している困難や悩みに対して、上司が応援者として仕事の価値や今後の前向きな側面について確認を促すことで、脱線しそうな状況から軌道修正する道を見つけてあげ、理想に近づくためのサポートをするのです。

 

「仕事のやりがいを取り戻す方法があるとしたら、どんなことだろう?」
「いまの仕事に、別の価値や可能性を見出すとしたら、どんなこと?」
「これから数年先を見据えたときに、いまの仕事はどんな価値をもたらしてくれるかな?」
「これまで頑張ってきたことが、ここからの仕事に活かせるとしたらどう活かす?」

 

このような問いかけによって、部下は脱線しそうな状況から軌道修正して、再度、自己実現に向かう道に戻り、これからの道筋を見つけ出すことができるでしょう。

 

部下のみならず、上司の私たちも、忙しさに追われ続けたり困難に直面したりすると、本来の目的や理想を忘れてしまいがちです。
「そもそも、何を大切にしたいの? 成し遂げたいの?」「失敗を活かすなら?」「できないと思っていることが、実はできるとしたら?」「結果が出るまでのプロセスを教えて」。これらの、視点を転換する、リフレーミングするような質問を、平素から携えておいて、いざという局面で繰り出してみるとよいでしょう。パッと視界が開けるものですよ。

 

*         *         *


 

部下の自己実現は、自己満足でも絵空事でもありません。それを陳腐なものにせず、実際の業務と結びつけながら、発展性のある自己実現へと変えていってあげる必要があります。
そのために、上司が広い視野を持って部下を見守り、応援し続けることが大切です。その具体的な方法のひとつが、3つのフィードバック。ぜひ活用し、部下の自己実現を支援し、上司の皆さん自身も自己実現を果たしましょう!  

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プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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