2022/01/04
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社長を目指す方程式
第81回
アイデアを実現して世界を回せ!「起業家精神」発揮に必要な2つの要素
- キャリア
- ビジネススキル
- マネジメント
- 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
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今回の社長を目指す法則・方程式:ティナ・シーリグ教授 「インベンション・サイクル④ 起業家精神=粘り強く続ける+周りを巻き込む」 |
そもそも「起業家精神」とは何か?
よく使われる言葉ですが、そもそも「起業家精神」とは何でしょう? みなさんの定義はどのようなものですか?起業家精神と聞いて、ドラッカーを思い浮かべる方も多いかもしれません(ドラッカーは「起業家精神」という表記も使いますが、多くは「企業家精神」としています)。彼の定義を引用しますと、以下のような説明になります。
「企業家精神とは、個人であれ組織であれ、独特の特性を持つ何かである。気質ではない。実際のところ私はいろいろな気質の人たちが、企業家的な挑戦を見事に成功させるのを見てきた」
「企業家精神の原理は、変化を当然のこととする行動であり姿勢である」
(『イノベーションと企業家精神』)
これだけでは、ちょっとよく分からないですね(苦笑)。スタンフォード大学のティナ・シーリグ教授(工学部)は、起業家精神を次のように定義しています。
「起業家精神は、イノベーションを活用してユニークなアイデアを形にし、他の人たちの想像力を掻き立てる」
起業家は、事業をともに行う人、資金を提供する人、出来上がった製品やサービスを購入して使用する人など、多くの人たちの想像力を刺激し、それによって自分のアイデアを実現します。生み出した製品やサービスが、それを使う人・知った人たちに伝染することで想像力を刺激。それにより、その人たちのクリエイティビティが発揮され、イノベーションを引き起こし、新たな起業家精神を呼び起こす――こうしたサイクルが世の中全体に拡散するように回るのが、シーリグ教授が提唱する「インベンション・サイクル」です。
イノベーションの事業化を目指す企業にとって起業家精神が必要なのは言うまでもありませんが、起業家の視点で物事を考えることが難題解決につながることもあります。どのような事業活動や日々の業務、生活においてもこうした見方を持つことは重要と言えます。
粘り強く続ける力の養い方
例えばiPhone、例えばシンガポールのマリーナベイサンズ。私たちを感動させる情報端末と建造物である両者は、当然のことながら、最初にあったのはアイデアや設計図だけです。それがiPhoneという製品として世界中に流通するには、観光名所として世界中の人たちを惹きつけるホテル&カジノリゾートとなるには、アイデアや設計図で終わることなく、とてつもない手間のかかる「実行」があってのことです。革新的なことを成し遂げるには、ブレることなく、粘り強く続けることが不可欠です。それには「これを実現したい」というビジョン、やる気、何より実現するために時間と心身をそこに集中させること(フォーカス)が必須です。
シーリグ教授は、長年の観察から、イノベーションから起業家精神の段階への移行に成功した人たちには共通のパターンがあることに気づきました。それは、彼らは充分に大胆でありながら目標を達成できる着実な「歩幅」を知っているということです。最初は小さく小刻みな歩幅から始まり、経験を積むほどその歩幅は大きくなり、成果も大きくなる。起業家として知識が増え、資源が蓄積され、自信がついて器が大きくなると、その器に見合った大きな目標を掲げられるようになるのです。
私たちは、小さなステップを積み重ねていくことでメンタルをも鍛えることができます。達成できるという自信を身につけ(「処理可能感」と言います)もうひと踏ん張りする力がつきます。
大概の場合、最も面白いアイデアは「もうアイデアは出尽くした」と思った後に出てきます。他の人ならばやめてしまうところで満足せず、それ以上の成果を追い求める姿勢は「不屈の精神(grit、グリット)」と呼ばれます。
影響力を発揮する方法を学べ
偉大な成果や功績は、自分ひとりで成し遂げられるものではありません。私たちは、何か有意義なことを成し遂げたいならば、周りに働きかけて自分のやることを応援してもらい、影響力を拡げる方法を見つける必要があります。周りを巻き込んで自分の影響力を拡大する方法は学ぶことができます。有効な方法を学び、取り入れ、使いましょう。ここでは、シーリグ教授が紹介している効果的な方法をご紹介します。
・チームの成果を向上させる環境を整える(やる気を高める大胆な課題を与え、建設的な議論が活発に行われる文化・場を育てる。ワイズマン&マキューン「増幅型リーダー」)
・思わずその輪に加わりたいと思うような「心に残る」物語を話す
・フレームを変えてインパクトの強い物語にする(チップ&ダン・ハース『アイデアの力』
・物語の骨組みなどのストーリーテリングの手法を取り入れてアイデアを伝える(「神話の力」など)
・影響力の原則を活用して周りを動かす(ロバート・チャルディーニ『影響力の武器』)
・自分の強みを強化してカリスマ性を高める(集中力+やさしさ+威厳。オリビア・フォックス・カバン『カリスマは誰でもなれる』)
この連載でも影響力を高める方法を色々とご紹介してきています。ぜひバックナンバーもご覧頂き、自分に合った方法を取り入れてみてください。
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インベンション・サイクル全体を改めて眺めてみますと、姿勢がブレない人には実行力があり、行動力のある人は発想力があることがわかります。
実行に必要な姿勢 発想を鍛える行動
1.想像力 = どっぷり浸かる + ビジョンを描く
2.クリエイティビティ= やる気を高める + 実験を繰り返す
3.イノベーション = フォーカス + フレームを変える
4.起業家精神 = 粘り強く続ける + 周りを巻き込む
実行力とは物事をやり遂げる能力であり、発想力とは型破りなアイデアを思いつく能力。どちらも必要な資質ですが、片方だけでは不十分です。実行力と発想力が揃って初めて、アイデアを実現することができるのです。
実行力と発想力を併せ持つ<両効き上司>として、インベンション・サイクルを回し続け、ポストコロナに向けて新たな価値を創造し、ご活躍ください!
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