TOP 社長を目指す方程式 今からでも遅くない!クリエイティビティ高める具体的方法を伝授

2021/12/07

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社長を目指す方程式

第79回

今からでも遅くない!クリエイティビティ高める具体的方法を伝授

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今回の社長を目指す法則・方程式:ティナ・シーリグ

「インベンション・サイクル② クリエイティビティ=やる気を高める+実験を繰り返す」

 
ポストコロナに向けて、上司の皆さんにこれから求められるのは、次の時代への「非連続的」なジャンプです。足元の改善から事業の変革まで、上司の皆さんのアイデアを形にする力が、これまで以上に要求されるようになっています。
前回は、スタンフォード大学のティナ・シーリグ教授(工学部)が提唱する、アイデアを実現するリーダーになる4つのステップ「インベンション・サイクル」をご紹介しました。「想像力」を起点に「クリエイティビティ」「イノベーション」を経て「起業家精神」を発揮するサイクルです。
今回は、「想像力」の次のステップ「クリエイティビティ」にフォーカスします。私たちはどのようにすれば、クリエイティビティを発揮できるようになるのでしょう?

ビジネスにおける「クリエイティビティ」とは?

皆さんが「クリエイティビティ」と言われて思い浮かべるものはなんでしょう? iPhoneのような私たちの生活を一変させる商品でしょうか。あるいは、YOASOBIやAdoのようなミュージックシーンを席巻する新感覚の楽曲か、はたまた、圧倒的な映像美で魅せてくれる映画(「ブレードランナー2049」のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督最新作、「DUNE」は圧巻でした)を思い浮かべる方もいるかもしれません。

 

見方によっては、エンゼルスの大谷翔平選手の“二刀流”もクリエイティビティ発揮の極みと言えるのではないかと思います。なぜならば、シーリグ教授によれば、クリエイティビティが発揮されるには、実現したいことへの強い意欲と、その方法を見つけるための実験的な試みを行う前向きな姿勢が必要だというからです。
その意味で、大谷選手は、日本ハム時代の栗山監督、エンゼルスのジョー・マドン監督という、「二刀流をやりたいという大谷選手の邪魔をしない」という考えを持ってくれた二人の監督に恵まれたことが非常に大きいと思います。既存の常識に縛られず、投手と野手を両立させるコンディショニングや起用を行った大谷選手と監督・コーチ陣こそ、MLBにイノベーションを起こしたクリエイティビティの発揮者であるといえるでしょう。(プロ野球で先発投手かつ1番バッターなど、漫画『ドカベン』の原作者・水島新司先生の作品でしかありえないと多くの人が思っていたはずです。しかもMLBで!)

 

では、「クリエイティブなアイデア」とは何なのか。シーリグ教授は、具体的なニーズを満たし、社会の中で目に見える形になっているものだと定義します。そして、想像力とクリエイティビティは、以下のように区別することが非常に大事だとも指摘しています。

 

・頭の中に海辺の光景を思い浮かべるのは想像力、その光景を絵に描くのがクリエイティビティ
・空飛ぶ自動車をイメージするのは想像力、実際に空飛ぶ自動車を作るのがクリエイティビティ

 

「想像力」の段階から「クリエイティビティ」の段階に進むとはどういうことか、ご理解いただけたことと思います。

 

ジョージア大学トランス・クリエイティブセンターのマーク・ランコとガレット・イエガーは共同論文で「クリエイティビティには、独自性と有効性の両方が必要である。独自性は必要不可欠だが、それだけでは十分ではない。独自性のあるものがクリエイティブであるためには、実効性がなければならない」と定義しています。即ち、上司の皆さんにとって、ビジネスにおける「クリエイティビティ」とは、想像力を駆使して課題を解決することを指すのです。

 

「クリエイティビティ」高める具体的方法

インベンション・サイクルでは、最初にひとつのことにどっぷり浸かり、どうありたいかを思い描くことで(想像力)、どのようにやる気を高められるかを見極め、実験を繰り返しながら答えを見つけていく(クリエイティビティ)。これがアイデアを実現するリーダーになる、前半2つのステップです。

 

やる気を高める方法については、これまでこの連載でも様々なアプローチや理論をご紹介してきました。シーリグ教授は『モチベーション3.0』のダニエル・ピンク氏が同書で挙げている、やる気を引き出す3つの鍵〜「自律性」「マスタリー(熟達)」「目的」を引用し、

 

1)自分自身が重要だと感じることに取り組む機会を得られ(目的)
2)何を、どのように、誰とするかを自分自身で選択でき(自律性)
3)挫折するほど難しくはないが、挑戦しがいのある課題を克服する(マスタリー)

 

ことこそがやる気が高まる源泉であるとしています。上司の皆さんにも異論はないでしょう。

 

実験を繰り返す方法には、「プロトタイピング」と「プレトタイピング」があるとシーリグ教授は紹介しています。

 

「プロトタイピング」は、皆さんご存知、目指すもののサンプルを作ることで形を整えたり、ユーザー体験を検証したり、サービスを見直したりして「これぞ」という確認ができたところで<本番>に移ります。

 

これに対して、聞きなれないのが「プレトタイピング」ではないでしょうか。グーグルのイノベーション・アジテーターとして活躍したアルベルト・サヴォイア氏が使い始めた言葉だそうですが、これはプロトタイピングのような投資をする前にテストを行うことを指します。

 

数週間から数ヶ月と相応のコストをかけてサンプルモデルを作るプロトタイピングと違い、数時間から数日内という「超ローコスト」でテストするのがプレトタイピングです。具体的には、実装しようとしているプログラムを最初に組むのではなく、同じような動きを人力でやってシミュレーションする(メカニカル・ターク)、想定している製品を木製で作って使用イメージを検証する(ピノキオ・テクニック)、まだ存在していない製品やサービスを宣伝してみて反応を確かめてみる(ファサード)などの手法があります。

 

プレトタイピングの最も重要な目的は「データの収集」です。想定しているような反響や使用感が得られるのか。得られれば大万歳ですが、結果が期待通りでなくてもOKです。貴重な教訓が得られ、次の実験や検証に活かすことができます。短時間、最小の労力しかかけていませんから、痛手も最小。リスクも最小限です。

 

実験で得られたデータが集まることは、当事者の意欲を更に掻き立てる原動力になります。意欲が実験につながり、実験結果を受けてさらに意欲が高まり、新たな実験につながるというフィードフォワード・ループが加速しながら回ることになります。このような形で、インスピレーションという小さな種が、大きな実現アイデアへと育っていくのです。

 

私たちは最終製品を見て、それらは最初から完全な形で作られたと思いがちですが、ほとんどの場合、実際はそうではありません。大ヒットした製品であれ、ビジネスの戦略であれ、流行語になったギャグであれ、実験を繰り返しながら練り上げられたものであり、小さな一歩の積み重ねの結果、辿り着いたものなのです。

 

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想像力同様、クリエイティビティは才能やセンスではなく、やる気と実験の繰り返しで手に入れることができます。皆さんにとって自分が短期、中期、長期でやる気になること・ものはなんでしょう? 見つけたら、いますぐプレトタイピングで実験開始です!  

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プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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