2022/01/07
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経営幹部・エグゼクティブのためのキャリア&転職を考える
第20回
大手企業からベンチャー経営幹部への転職を失敗させる5つの要因
- キャリア
- 転職
経営者との距離感を間違える
4つ目の要因は「経営者との距離感を間違える」です。大手企業出身の方はベンチャー経営者とのコミュニケーションの距離感を間違えてしまい、期待された活躍のできないまま転職を失敗に終わらせる方が少なくありません。
ベンチャー企業の経営幹部は経営者の意思決定をかえるような「進言」を日々の活動の中で行っています。
大企業ですと、経営の意思決定のためにいくつもの会議、事前打ち合わせが行われると思います。一方、ベンチャーでは準備に時間を費やさずに、スピード感をもって意思決定をすることは少なくありません。(もちろん会議で決める経営判断も多くあります)
経営者からすれば、すぐにでも話を進めたい経営や事業に関する重要な話題について、会議室を確保し、仰々しい資料を準備して確認に臨んでいるようなことが続くと、「●●さんはスピード感がない」という評価をされてしまいます。
ベンチャーの経営者は、そういった話題であれば、すき間のちょっとした時間で確認を行い、意思決定をしたいものです。
経営者の期待スピード、コミュニケーション方法は人それぞれではありますが、以前にいた企業と同じやり方を続けるのではなく、新しい環境に適応することが大事です。
「それでは来週会議の時間を抑えてお話をしますね」ではなく、経営幹部として日常的に「この件はすぐに解決したいのですが…」と経営者とコミュニケーションをとれるようにすることが必要です。
実は、転職活動中の選考のやりとりでも、そういった経営者との距離感をとるのが苦手そうだと感じることがあります。
「(面接の場で)経営者の方に●●のようなことを聞いては失礼だと思ったので、聞きませんでした」
●●の中には様々なキーワードが入ってくるのですが、転職を考える方にとって大事にされているポイントです。そういった事項を聞くことができていない状況を想像してください。
経営者が聞きにくい雰囲気を出しているケースもありますが、こういった場面でご自身が重要と思っていることを気軽に質問ができない方は、入社後にもコミュニケーションがうまく取れず、経営者に対して意見することができません。
もちろん、ご自身の意見を通すことが重要なのではありません。企業が成長するために経営者とのコミュニケーションを積極的に行い、認識を合わせ、行動を起こし続けていくことが重要です。
ベンチャー経営幹部として活躍できる方は、経営者と適切な距離感をつくり、日常的に経営や事業に関する重要な進言を通じてご自身の活躍の場を広げていきます。
これまでの経験をそのまま活用する
最後、5つ目の要因は「これまでの経験をそのまま活用する」です。ベンチャー企業で成功するためには、自社のこと、サービスのこと、業界のこと、チームのことを”新たに学び”、その上でこれまでの経験や方法論を新天地でカスタマイズし、周囲へアウトプットしたり、行動をすることが必要です。学ぶためには少し時間が必要になりますが、その時間を惜しまずに、学ぶことで周囲との距離を縮めながら、チーム運営を行うことが成果への近道となります。
一方、失敗する人は、これまでの経験をそのまま活用しようと考えます。
新しい環境で何か成果を出したいと思った時に、過去の成功体験を新しい組織にアウトプットすること自体は悪いことではありません。
ただし、大手企業の経験がベンチャー企業でそのまま通用することは滅多にありません。新たに学び、これまでの経験と融合し、物事を動かしていくことが必要です。
ベンチャー経営幹部への転職を成功させるために大事なのは適応すること
ここまで大手企業からベンチャー企業へ転職し失敗する経営幹部の5つの要素をあげました。大手企業からベンチャー企業への転職であれば、前職での素晴らしい実績をお持ちでも、ゼロからのスタートをきることになります。
環境変化に適応しながら、同時に早い段階で成果を求められますので、大きなプレッシャーを感じる方も多いでしょう。
そのような場面で、プライドが邪魔をしてそれまでのやり方を変えることができなかったり、周囲に相談できなかったりする方が、ベンチャー経営幹部デビュー時に苦渋をなめています。
家族など周囲の人々も含め環境適応を進め、ご自身の行動を変えることも厭わずにベンチャー企業に適応させることが必要です。
そして、経営幹部には企業経営に影響を与えるような行動、実績を出すことが求められます。
大手企業出身の方がベンチャー企業の経営幹部として失敗するのは、スキル不足が理由ではないことがほとんどです。
ベンチャー企業に転職をしたのに、以前の仕事の進め方、コミュニケーションの取り方を継続、さらに経営幹部として経営に一歩踏み込む意識が弱いことが多くの原因です。
経営幹部として大手企業の経験をベンチャー企業に持ち込み、経営や事業を変える気概をもち、今までのやり方を全て見直しながら適応をすることが求められます。
ご自身の経験を活かしてベンチャーへ飛び込むことを検討している方に、ベンチャー経営幹部として求められるビジネスへの向き合い方、姿勢をお伝えできていれば幸いです。