2020/04/28
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社長を目指す方程式
第38回
ジョブズらを口説き落としたディズニー前CEOの「10の法則」
- キャリア
- ビジネススキル
- マネジメント
- 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
◆買収成功のための真の秘訣
話をディズニーの事業展開に戻しましょう。アイガー氏がディズニーを<本家ディズニー作品>にこだわっていたら、これだけの業績拡大(就任時の2005年に利益25億ドル(約2700億円)から2019年に104億ドル(約1兆1200億円)へ、同期間中に時価総額は480億ドル(約5兆円)から2300億ドル(約25兆円)へと、それぞれ4倍、5倍にしています)はなし得なかったのは間違いありません。
<夢・冒険・想像力>というウォルト・ディズニーが大切にしたものをコアとしてブラさず、しかし自スタジオ作品に固執せず、というアイガー氏の経営・事業展開の姿勢が、こうしたことを成し遂げたのです。これ、ディズニーという歴史的なブランドを経営者として背負い、その中でステークホルダーからのプレッシャーも並大抵のものではない中で、なかなかできないチャレンジだと思います。

買収した各社の制作姿勢を買収後も尊重し、”らしさ”を保ったまま制作できていることも、こうした最近の各社のメガヒットにつながっていると思われます。2019年末にスタートした動画配信サービス「ディズニー+」も好調に立ち上がっていると報道されています。
アイガー氏がディズニーCEO就任後に最初に仕掛けたピクサーの買収に際して、こんなことを述べています。
「自分たちが本当のところ何を手に入れるのかがよくわからずに買収を行ってしまう企業は多い。買収は、物理的な資産や製造設備や知的財産を手に入れるためだと彼らは思っている(確かに、産業によってはその考えが当てはまる場合もなくはない)。だがほとんどの場合は、買収によって手に入れるのはそこにいる人材だ。クリエイティブな産業では、そこにこそ本当の価値がある。ピクサーをピクサーたらしめている文化を守らなければ、ディズニーがピクサーを買収する意味がないのだと、私はジョン(*ジョン・ラセター。ピクサー社の買収当時、チーフ・クリエイティブ・オフィサー(CCO))にしかと確約した。」(『ディズニーCEOが実践する10の原則』ロバート・アイガー著/早川書房)
この考えを退任時まで一貫して守ったからこそ、強烈な作品個性とスタジオ・オーナーを持つ各社の買収は成功し、買収後に「らしさ」を失わず素晴らしい作品がリリースされ、結果として莫大な収益をもたらした=買収が大成功へと結実したのです。