2018/11/21
1/1ページ
理論で固める経営戦略
第10回
「Nudge(ナッジ)を企業内で活用する」というマネジメント戦略(7)
- 経営
- 佐々木一寿 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所
ヒューマンエラーを減らすために「エラーを予測する」
◇人が間違いを犯すのは宿命的だとして
前回は「⑥複雑な選択の体系化」で、極めて現代的な、そして奥深い“選択”の複雑さに対処するNudgeを紹介してきた。
今回は「⑤エラーを予測する」で、Nudgeの特徴である「人への優しさ」を感じていただこう。
<セイラーのナッジの6つの示唆>(第4回 再掲)
①iNcentives(インセンティブの設計)
②Understand Mappings(マッピングを理解する)
③Defaults(デフォルト設定)
④Give feedback(フィードバックの与え方)
⑤Expect error(エラーを予想する)
⑥Structure complex choices(複雑な選択を体系化する)
◇エラーが起きてもいいようにデザインをする
たとえば、行動経済学者のリチャード・セイラーは、パリ出張で現地の電車に乗った際、自動改札機にどのように切符を入れても(表裏、上下)、読み取れることに気がついた。
これは人間のミスを事前に予測して対策をしているNudgeだと感心したという(正確には、セイラーは長らく一通りだと思っていて、その「正しい入れ方」を得意げに同僚たちに教えているときに、「じつはどの方向でもいい」という事実を一緒にいた彼の奥さんに指摘されている)。
ほかに私が気付いたNudgeは、
- エレベーターのフロアのボタンの取り消し方法
エレベーターのボタンを押すとき、私はたまに、フロアのボタンを間違えて押してしまうことがある。
同乗者がいた時には大変顰蹙を買いそうなミスだが、2回連続で押すとキャンセルできるエレベーター機であれば、私としては非常に有難いと感じる。この機能もNudge的だ。
- コンビニ前にある応募券入れ
私の職場の近くのコンビニエンスストアの前にかなり大きな縦長の応募券入れがあった。当選したら豪華商品か稀少な招待券がもらえるようだ。その箱の投票口付近に「これはゴミ箱ではありません」と書いた張り紙がしてあった。
たしかに応募者なら応募券入れの箱だとはわかるが、設置場所的に遠くから見ればゴミ箱だと勘違いしてしまいそうだ。実際にゴミが入れられている状況があるので、張り紙で注意を促しているのだろう。
この場合は、応募箱の形状を違うものにすることがNudgeになるだろう。
- 予防接種
インフルエンザなどの予防接種は、インフルエンザにかかる可能性がありそうなら、受けた方がよいだろう。絶対確実ではないとはい...
こちらはプラチナメンバー限定記事です。
プラチナメンバー登録(年間11,000円or月間1,100円)を
していただくと続きをお読みいただけます。
※登録後30日間無料体験実施中!