TOP スペシャルコラムドラッカー再論 「現在と未来」、「成果と効率」。

2016/11/29

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スペシャルコラムドラッカー再論

第52回

「現在と未来」、「成果と効率」。

  • エグゼクティブ
  • マネジメント
経営とは、常に現在と未来、短期と長期とをバランスさせていかなければならない営みだ。

「組織の存続と健全さを犠牲にして、目先の利益を手にすることに価値はない。逆に、壮大な未来を手に入れようとして危機を招くことは、無責任である」(『マネジメント—課題、責任、実践』、1973年)

言うのは簡単だが、現実問題、これが難しい。しかし、いずれにしても未来は現在の積み重ねの先にあるということを、我々は踏まえることしかできないのではないかと思う。

「マネジメントにとって、未来は断絶している。しかし、未来はそれがいかに現在と異なるものであれ、現在からしか到達しえない。未知なるものへの跳躍が大きければ大きいほど、跳躍のための土台は堅固でなければならない」(『マネジメント-–課題、責任、実践』)

ドラッカーはこの件に関する具体的取り組み策として、現在のものを陳腐化し(成果の出なくなったものの破棄)、新たに成果に結びつくものへの入れ替えを継続的に行っていくことを説いている。
これは我々にとって、非常にわかりやすく、実行レベルを測ることのできものだろう。

実際に、自社において、「これまで顧客に求められていたが、いま~先、ニーズに合わなくなってきている商品・サービス」はなんだろう?
あるいは、「これまでは成果を一定以上出してくれていたが、ここから先の事業の進め方、業務手順においては成果が出せなくなっている従業員」は、誰だろう?

このことをドラッカーは、「管理の仕事と企業家の仕事」と言っている。

「既存の事業には、市場、技術、製品、サービスがある。設備と機会は揃っている。投資が行われ、果実が待たれている。人が雇用され、配置されている。マネジメントが行うべき管理の仕事とは、これらの生産要素からの算出を最適化することである。(中略)
しかし、最適化は成果についても行わなければならない。製品と市場を一変させる機会に焦点を合わせる必要がある。さらによく行うにはどうするかを考えなければならない。いかなる製品、市場、用途が、異常なほどの成果をもたらすかを考える。そして、いかなる成果に向けて資源を投ずれば、異常なほどの成果をもたらすかを考える」(『マネジメント—課題、責任、実践』)

成果のあがる事業であることが繁栄の前提であり、効率はその上での条件となる。
我々経営者は、適切に仕事を遂行し(=成果側面)、それがうまくいくように仕事を進める(=効率側面)必要があるのだ。

次週、このことへの補足をご紹介したい。

プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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