2018/01/09
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経営者心理学〜現代ビジネスシーンでの、こころの使い方
第5回
「社会貢献」――優しさと余裕も身に付けて、自らが従業員の手本になる。(5/5)
- スペシャル対談
- ビジネススキル
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「経営者を語る。」――今回は、作家で心理学者の晴香葉子氏をゲストにお迎えします。
今回の対談では、「ビジネスシーンでの幸福感や社会的孤立」、「経営者として求められる役割」などについて、弊社代表・井上和幸と語り合っていただきました。全5回でお届けします。
井上 さて、この対談も締めくくりに近づいていますが、まとめとして晴香さんから経営者やリーダーの方々に対して、ぜひ伝えたいということを伺えればと思います。
晴香 社会貢献の大切さです。実は、私が経営者の方に投げかけてみたいのはこのことなんです。今は、格差意識や不公平感、勝ち組や負け組という意識がものすごくありますよね。しかし、私たちは不公平を感じたときや相手が過剰に得をしているときにイラッとくる一方で、自分だけが得をしてしまっているときにも同じように嫌悪感を抱くことがあるということが、心理学的にわかっています。「不公平回避」と言いますが、人は、自分ばかりが得するようなことも避けるのです。このような傾向は、メソポタミア文明以降に広がったと考えられています。
それまでは、その日とった物をみんなで分けていました。身体の弱ったおばあちゃんや、ケガしたお父さんがいても、若者がとってきた物をみんなで分けていた。まず不平等というものがなかったので、不公平感もなかったんです。ところが、文明ができて食料を蓄えておけるようになると、作物を育て、土地を所有するようにもなり、村みたいなものができて、統治者が必要になり、有力者が分け前をたくさんとるようなことになって、不平等な分配が行われるようになった。それで不公平感をもつようにもなりました。
現代でも、アフリカのハッザの人々は狩猟民族そのままの生活をしているんですが、彼らは、うつ状態の人がゼロなんです。しかも自己肯定感がものすごく高い。赤ちゃんを一日中抱っこして座っているお婆さんも、「自分は群れの仲間にとって大事な存在だ」と自覚しています。取ってきた食料を全員で平等に食べて、それぞれができることをやっている社会では、不公平感のストレスもなく、抑うつ状態の値もきわめて低いということがわかっています。
井上 翻って、日本では少子高齢化、格差社会が急速に進んでいますよね。
晴香 日本は、このままいくと人口が1億人を割り、そのときには生産年齢人口は50%ほどにまで激減すると考えられています。二人に一人しか働かないと想像すると心配になりますが、日本は、先人ががんばってこんなに衛生的で豊かな社会を作ってくれた国です。やりようによっては、譲り合い、分かち合い、今の生活をハッピーに続けていくこともできるはずですが、今は「自分だけは損したくない」といった意識の強い人も増えていますよね。世代間格差、学歴や経歴、所属組織による階級意識、就労スタイルによる差別、賃金格差、生活保護費の不正受給者によるフリーライダー現象など、「なんかずるい」とか「不公平だ」と感じる機会も増えているのかもしれません。
不公平感によるストレスは、人と人との結びつきを阻害します。そして「自分だけは良い思いをしたい」という人を増やしかねません。これを「自己充足型個人主義者」といいます。もちろん、昔に比べてさまざまな価値観の人が生きやすくなったという意味では良い面もあるとは思いますが、自己充足型の個人主義者は、恋愛や夫婦関係による幸福感や、家族や友人との生活による満足感が低いことがわかっています。中でも、一番問題なのは、他人を助けようとする意欲がかなり低いことです。生産年齢人口が二人に一人になっていく少子高齢社会で、このことは将来大変な問題になってくると私は思っています。
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