2018/09/21
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私が経営者になった日
第4回
【じげん 平尾氏】起業家と事業家と経営者(1/3)
- キャリア
- 経営
- 経営者インタビュー
- 平尾 丈氏 株式会社じげん 代表取締役 社長執行役員 CEO
●三足のわらじから、1点集中
「起業家と事業家の顔が中心でしたが、この会社を経営していて、すごく楽しかったのですよね。事業がスケールする喜びや、できることが増えていく喜びを知りました。短い間に何回も拡張移転はするし、様々なバックグラウンドを持つ自分よりも年上の人など、いろいろな人たちをいっぱい雇える。学生時代の起業では経験できなかったダイナミズムに満ちていたのです。何より、お客さんの気持ちに応えていくことが楽しかったですし、ユーザーがどんどん増えていくことも楽しかった。
企業として、ちょうどティッピングポイントを超え始めてきたタイミングでしたね。」
タイミングと縁もあり、途中からはジャフコにも関わってもらいながら、MBOの資金を用意し、具体的なプランも出す中で、最後は親会社の社長である内藤氏が起業家の先輩として独立させる英断をしてくれた。
●徹底的な議論で経営の補助線を見つける
2013年にマザーズに上場するにあたり、スケーリング、リスクと成長のバランス、ガバナンス、中長期の投資バランス、利益の確保など、さまざまな問題について証券会社や会計事務所を始めとする関係者と議論をする。ここでの議論には、それまでの平尾氏のスコープには入っていない項目も多くあったという。
「僕なりの矜持として、初めてのことであろうと臆さずきちんと向き合おうと決めました。
“なぜそういうことを言っているのだろう”“どういう背景で言っているのだろう”“それは弊社にとって、業界、産業にとってどのくらい大事なのだろう”というのをひたすら議論する日々が続きました。
そうやって彼らとの議論で徹底的に向き合っていると、『経営の補助線』というべきものが見えてくる。
上場にあたり、僕が経営者として、すべてがプロフェッショナルにできたとは思っていません。
しかし、こうした補助線が見えたことで、一つ一つの壁を乗り越えていくにあたって、ベストから逆算していくことはできました。」
●本質論で前例のない壁を超える
前例がないことも、平尾氏は「本質論からしたらこっちなのに、なんでみんなこっちに行っているんだ?」「では、なぜみんなそう思って、そう行かなければいけなかったのか」を突き詰めて考え議論して、きちんと導き出すようにした。「そうやって相手を動かして、進めていく。その連続が、前例のない壁を越えていくにあたって活きてきました。
たぶん、事業家と経営者のパラレルみたいな感じでハイブリッドにやってくると、どこかで事業家としての限界と、経営者としての限界も見えてくるのだと思います。そこで、ひたすら両方の顔でシャドーボクシングをやっていく。
心は起業家で、顔つきは事業家と経営者でやっていくみたいな形が、特に上場してからのこの5年だったのではないでしょうか」
(構成・文/阪本淳子)