2018/09/13
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ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術
第8回
優秀な人を採用したがるのは、三流社長のやることだ
- キャリア
- ビジネススキル
- 小山 昇氏 株式会社武蔵野代表取締役社長
それでも決められない学生はいます。武蔵野は内定後、7日以内に入社承諾書を提出しない場合は、内定の通知を取り消すルールです。
数年前までは、学生に合わせて1カ月間の猶予を与えていましたが、決められない学生は期間に関係なく決められません。承諾書提出がギリギリだった学生は、不思議と入社してからも、事あるごとに悩み、なかなか成果が出せません。
一方、すぐに決められる学生は、入社後も活躍します。決められない学生には「他の会社にいった方がいいよ」とはっきり伝えています。
強引に入社させて、すぐに辞めてしまってはお互い不幸です。「他の会社を選択した方がいいよ」と伝えると不思議と「武蔵野に決めます」となります。結果、今期2019年卒採用は現在内定者25人で辞退者0人(2018年7月現在)という成果を出しています。
■インストラクター制度で新入社員を定着させる
また、仕事の面では「インストラクター制度」を設けています。インストラクター制度は、入社3年目社員が新人の指導を行う制度です。新卒社員と一緒に現場に出て、仕事のやり方を教えます。新入社員の教育は「部署ごとの先輩がOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング:職場で実務をさせるトレーニング)をする」のが一般的です。ですが、それだと指導する先輩の実力によって、教え方に差が出てしまいます。
そこで、武蔵野は、指導する社員のレベルがバラつかないように「インストラクター制度」を設けています。3年目社員は新卒社員と、年齢やキャリアが近い分、新人の悩みが理解できます。
ベテラン社員に新卒社員の指導を任せると、「これくらいは、分かっているのが当然」と思い込み、指導が一方的になってしまいます。
以前、こんなことがありました。私(小山)が、新人を伴なってお客さま訪問をしたときのことです。あるビルの玄関に、ライバル会社の足ふきマットが敷かれていたので、私は新人社員に、「あそこにある玄関マットをめくってきなさい」と命じました。すると、彼は玄関まで走っていき、マットを文字通り「めくった」のです。
私はこのとき、腰が砕けそうになりました。なぜなら、わが社では、「めくる」=「ライバルからお客さまを奪う」の意味だからです。「めくる」は日常的に使う用語で、私は「言葉の意味を知っている」前提で話しかけたが、そうではなかった。悪いのは、用語を知らなかった新人ではなく、「それくらい知っていて当たり前」と決めつけていた私です。
このときの経験から、私は、「入社10年、20年のベテランと新人とではレベルは違うし、話す言葉も違う。人材教育の先生としてふさわしいのは、新人より少しだけ経験のある社員である」ことに気が付きました。
また、上司は毎月部下の一人とマンツーマンでサシ飲みをしたり、半期に一度部門の異なる幹部と一般社員で飲みに行く仕組みもつくったり、現場での悩みや夢を共有できるような制度を設けています。
会社での一体感を設けるのも定着率のアップにつながっています。
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■書籍情報
『人を動かしたいなら、「やれ」と言ってはいけない』
著者:小山昇
出版社: SBクリエイティブ
価格:1,620円(税込)
※この記事は、アイティメディア株式会社の許諾を得て
「ITmediaエグゼクティブ『ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術』」
の連載から転載したものです。無断転載を禁じます。
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